有病者歯科医療
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有病者の難治性口腔疾患に対する漢方薬の有用性について
井島 喜弘本間 義郎久保田 英朗
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2007 年 16 巻 2 号 p. 85-91

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抄録

2002年5月より2005年10月までに当科を受診した有病者35例を対象に, 難治性口腔疾患に対する漢方薬の臨床効果を検討した.
対象患者は男性5例, 女性30例で年齢は34~87歳 (平均年齢63.9歳) であった. 1人平均罹患疾患数は2.8で, 1人平均服用薬数は4.3であった. 歯科受診理由の内訳は口腔内異常感覚21例 (60.0%), 舌の異常感覚16例 (45.7%), 難治性口内炎13例 (37.1%), 口腔乾燥9例 (25.7%), 摂食障害8例 (22.9%), 原因不明の歯肉痛6例 (17.1%), 嚥下障害4例 (11.4%), で口腔内異常感覚が最も多かった (複数症状含む). 各症状に見合った漢方薬を単独, あるいは多剤併用で2~8週間投与し, 投与8週間後に症状改善度と日常生活支障度により, 漢方薬の有用性を評価した. 漢方薬の症状改善度は, 「消失」20例 (57.1%), 「改善」14 (40.0%), 「不変」1例 (2.9%), 「悪化」0例 (0%) であった. 日常生活支障度は, 「全く支障はない」20例 (57.1%), 「ほとんど支障はない」9例 (25.7%), 「軽度支障がある」5例 (14.3%), 「支障がある」1例 (2.9%) であった. 漢方薬の有用性は「極めて有用」28例 (80.0%), 「かなり有用」3例 (8.6%), 「やや有用」3例 (8.6%), 「有用と思われない」1例 (2.9%) と良好な結果となった. また, 投与期間中は全身疾患の増悪も認められなかった.
以上のように有病者の難治性口腔疾患に対する漢方薬の臨床効果は, 多剤服用下においても口腔症状を軽減させ, QOLの向上に役立つ高い有用性があると思われた.

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