有病者歯科医療
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上顎癌治療中に患側内頸動脈に血栓を生じた1例
長汐 沙千穂酒井 洋徳小池 剛史小林 啓一栗田 浩倉科 憲治
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キーワード: 内頸動脈血栓, 上顎癌
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2008 年 17 巻 1 号 p. 11-15

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抄録
頸部郭清術の合併症として内頸静脈の閉塞や血栓症を生じる例はしばしば報告されているが, 内頸動脈に血栓を生じた例は極めてまれである. 今回われわれは左側上顎悪性腫瘍の手術後に患側内頸動脈に血栓を生じた症例を経験したので報告する.
患者は70歳の男性で, 口蓋部の腫脹を主訴に初診した. 既往歴として胃癌, 食道癌, 肺癌があった. 口蓋に硬結を伴う腫瘤を認め, 生検および画像検査の結果より左側上顎扁平上皮癌 (T4N2bM0) と診断された. TXT86mg, CDGP144mgによる術前化学療法を施行後, 上顎部分切除術, 左側全頸部郭清術を行った. 術後に放射線治療1.8Gy/回を開始した. 放射線を50.4Gy/28回照射した時点で, 左側頸部の鈍痛を自覚し, 頸部USと血管撮影を施行したところ, 左側総頸動脈から内頸動脈への分岐部付近に約2mmの可動性のある血栓を認めた. 動脈の狭窄率は30%であった.
翌日より1か月にわたりバイアスピリン®100mg/dayの内服による治療を行ったところ, 頸部USで血栓の消失を認めた. 現在のところ, 悪性腫瘍, 頸部血栓とも再発などは認められない.
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© 日本有病者歯科医療学会
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