有病者歯科医療
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関節リウマチ (RA) 患者の抜歯を契機として発症した上顎骨融解の1例
中島 博岡田 とし江見崎 徹大橋 瑞己増田 千恵子住本 和歌子中道 由香宍戸 孝太郎
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2008 年 17 巻 1 号 p. 23-28

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抄録

76歳女性, 関節リウマチ (RA) 患者の左上顎犬歯の抜歯を契機として上顎骨が融解し上顎骨骨髄炎と診断された1例を経験したので報告する. 患者は, 1992年にRAを発症しメトトレキサート (MTX), プレドニゾロン (PSL) が投与されている.
2006年8月末から左上顎犬歯の軽度の疼痛を自覚するも放置, 同年10月23日疼痛が増大したため近歯科医受診, 同日左上顎犬歯根尖性歯周炎の診断のもとに抜歯を受け, セファクロル1,000mg/日が投与されたが症状増悪のため同31日に紹介来院した.
初診時, 左上顎歯肉は腫脹し複数の瘻孔が認められ, CT像では同部の骨が融解していた. 血液生化学検査では, 白血球数は8.1×103/ul, 赤沈は41mm/30', 86mm/60', CRPは3.74mg/l, ALPは238IU/lであった.
同日より消炎のためファロペネム (FRPM) 600mg/日を経口投与, 11月2日セフトリアキソンナトリウム (CTRX) 2g/日静脈投与に変更後に腫瘍の疑いもあり, 生検を行って上顎骨骨髄炎と診断された. MTXのみを中止し, 急性症状が消退した11月21日, 手術直前からCTRX2g/日の静脈内投与を行い全身麻酔下に左上顎部の感染組織除去手術を行った. MTXの投与が再開されたが, 2008年4月現在, 上顎骨骨髄炎, 骨融解の再燃は認めない.
RA患者においては, 抜歯を含めた歯科口腔外科治療時に重篤な感染症を発症させる可能性のあることを念頭において処置する必要があると考えられた. 同時にMTX, PSL, など免疫や骨代謝に影響する薬剤を投与する必要のある患者には事前の歯性感染病巣の治療と定期的な歯科管理が必要であることを一般の医師に訴えることも大切であると考えられた.

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