有病者歯科医療
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アイゼンメンジャー症候群患者の歯科治療のための全身管理
飯田 尚紀野口 いづみ笹尾 真美雨宮 義弘中川 洋一
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1996 年 4 巻 2 号 p. 87-93

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抄録
53歳男性 (体重52kg, 身長151cm) のアイゼンメンジャー症候群患者の歯科治療に対する全身管理を経験した。患者は右上顎の痛みを訴えて来院した。患者は41歳時に血尿と息切れの為に内科を受診し, 心室中隔欠損症, 肺高血圧症を指摘され, アイゼンメンジャー症候群の診断を受けた。根治術の適応外と診断され40日間入院し, 投薬治療が行われた。51歳時には心不全のため40日間入院し, それ以後フロセミド (ラシックス(R)), スピロノラクトン (アルダクトンA(R)), 塩酸ジルチアゼム (ヘルベッサー(R)) を内服しており, NYHA II~III度と考えられた。血圧115-140/65-70mmHg, 脈拍は68-89回/分と正常範囲内であったが, 動脈血酸素飽和度は88~93%と低値であった。内科の担当医からは突然死の可能性もあると伝えられていた。口腔内精査の結果, 全顎の歯周炎が認められ, 7〓78〓の抜歯と全顎の除石が必要と考えられた。
術前には担当医と連絡をとり病状を把握し, 患者と家族に病状を説明し承諾を得た。入院させて処置を4回にわたって行うこととし, 1, 2回目は抜歯を, 3, 4回目は除石を行った。術前より感染性心内膜炎予防のために抗菌剤を投与し, 術中は心血管系作動薬と抗ショック薬と救急蘇生器具を準備した。患者を処置室に入室させ, 血圧計, 心電図計, パルスオキシメータを装着し, 静脈路を確保した。局所麻酔は表面麻酔奏効後にフェリプレシン0.03単位添加3%プロピトカインを用いて浸潤麻酔を行った。4回とも術中経過は順調で, 術後も30分間パルスオキシメータによる観察と注意深い管理を行った。なお, 術後3日間抗菌剤を投与し, 術後も合併症もなく無事に経過した。
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