抄録
脳血管障害は, 脳を灌流する血管の病変による脳の機能的, 器質的障害をもたらす疾患である。近年同疾患の予後が改善し, 発症後長期の生存が可能となったものの, 何らかの後遺症を有する場合が少なくない。今回著者らは脳血管障害の後遺症を有しており, 自他覚症状が不明瞭なため陳旧性となった顎関節脱臼の2症例に対し, 全身麻酔下で徒手整復後, 再脱臼防止のため顎関節前方障害形成術を行なったので, その概要について報告する。症例1は1年10カ月, 症例2は1年2カ月, 再脱臼を認めず, 経過良好である。処置にあたっては, さまざまな障害を有しているため, 術前の十分な全身状態の把握と慎重な術式の選択が重要である。