抄録
今回我々は精神科疾患を有する患者の口腔外科治療を3例経験したので, その概要を報告した。症例1は抑うつ神経症の患者, 症例2は精神分裂症の患者で, 2例とも精神科疾患が受傷の原因と考えられた下顎骨骨折例であった。症例3はアルコール依存性うつ状態の患者で, 舌に自傷による舌壊疽を形成した症例であった。治療に際しての患者の承諾は, 3例とも本人から直接は得られなかったが, 精神科主治医や家族の理解, 協力のもとに治療を行い良好な結果が得られた。なお, 症例3は他の精神科病院からの依頼で, 看護士の付き添いのもとに当科で通院治療を行い軽快した。いずれの症例も顎・口腔疾患に対する精神科主治医の理解と協力なくしては口腔外科治療を行えなかったと思われた。