有病者歯科医療
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5 巻, 1 号
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  • 7: 当科における入院下歯科治療 (抜歯) 例の実態および同患者・家族の意識調査
    栗田 浩, 宮下 敏秀, 田中 廣一, 小谷 朗
    1996 年 5 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1990年から1994年の間に, 当科入院下に歯科治療を行った患者をretrospectiveに調査し, 併せて, 患者および家族の意識調査を行った。
    入院下に歯科治療を行った患者は年平均5例で, 全入院患者の約4%を占めた。全例が抜歯目的であり, 出血素因, 心疾患, 脳梗塞等の患者が多く, 年齢は若年者から高齢者まで広く分布していた。入院治療に対しては患者, 家族とも好意的であったが, 入院に対しては受け身的な姿勢が見られた。入院治療を考える上で, 核家族化, 家庭歯科医の低普及, 後発性トラブルなどの問題点がみられた。
  • 竹腰 恵治, 小谷 順一郎, 足立 裕康, 上田 裕
    1996 年 5 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    我々はこれまでに, 重度痴呆性老人を対象に義歯の装着状況と日常生活動作 (Activities of Daily Living: ADL) との関係について調査し, 重度痴呆性老人の義歯適応の目安を求めた。すなわち, まずADL5項目 (排泄, 食事, 入浴, 衣服の着脱, 洗面) について, 自立度を3度 (自立, 一部介助, 全介肋) に分類した。そして, 各自立度を3, 2, 1点として15点満点で各人のスコアー合計値を算出した。その結果, 10点以上は義歯の装着が可能で, 7点以下は装着が困難であるとの結論を得た。今回, この目安が中等度から非痴呆にまで適応できるか否かをみるため, 痴呆の程度が比較的軽度の患者を収容している施設を対象に, 義歯の装着状況とADLの関係について調査し比較検討した。
    対象は, 特別養護老人ホーム利用者113名 (平均年齢83.9歳) で, 痴呆の程度の内訳は, 重度30名, 中等度13名, 軽度18名, 痴呆でない者52名であった。方法は, ADLを5項目 (歩行, 排泄, 食事, 入浴, 衣服の着脱) について, 上記と同様にした。ADL各項目と義歯装着可否との関連性については, 赤池情報量規準 (Akaike's Information Criterion: AIC) による分析, 検討を行った。
    その結果,
    1. 痴呆の程度別にみた義歯装着率は, 痴呆の程度が軽くなるにつれて高くなる傾向を示した。
    2. ADLの「衣服の着脱」と「食事」の項目では, 自立度が高い程, 義歯装着率も高いことが認められた。しかし「排泄」「入浴」「歩行」では義歯の有無との関連性がなかった。
    3. 非痴呆群および軽度群では, ADLスコアー上, 義歯装着者と非装着者の間に差がなかった。しかし, 中等度群および重度群では「重度痴呆者に対する義歯適応の目安」がほぼあてはまった。
  • 見崎 徹, 野村 洋文, 兼松 宏太, 高田 耕司, 京田 直人
    1996 年 5 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    手指部で血圧を測定できるUV-101DS (UV群) の有用性を上腕における測定値 (上腕群) と比較検討した。
    対象は精神鎮静法を併用した局所麻酔下で口腔外科手術を受けるASA Risk I~IIの入院および外来患者計34名および健康成人ボランティア10名である。
    その結果, 患者におけるUV群の血圧を上腕群と比較すると, 収縮期血圧および拡張期血圧共に有意な差はみられなかった。
    外来症例の血圧を65歳以上の高齢者群 (15名) を65歳未満の群 (9名) に分けて比較したが, 両群間での有意差はみられなかった。さらに座位にした健康成人ボランティアにより, 胸部ユニットの位置を上下方向に変動させた場合の血圧の変動についても検討した。その結果, 胸部ユニットを10センチメートル下方に移動させた場合は収縮期血圧, 拡張期血圧共に有意に上昇した。
  • 増田 晃司, 宇佐美 雄司, 上田 実
    1996 年 5 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1994年4月から1995年3月までの1年間に精神科を主体とする八事病院の歯科を受診した初診患者590名について臨床統計的検討を行った。590名のうち375名 (63.6%) が当院の入院患者で229名 (38.8%) が閉鎖病棟, 93名 (15.8%) が開放病棟, 41名 (6.9%) が老人病棟, 12名 (2.0%) が内科病棟の患者であった。43名 (7.3%) が近隣にある老人保健施設および特別養護老人ホームからの受診で, そのほか172名 (29.2%) が一般患者かあるいは当院の職員であった。年代別では50歳代が最も多く161名 (27.3%), 次いで40歳代141名 (23.9%) であった。平均年齢は47.2歳 (男性44.1歳・女性50.4歳) 最年少者は15歳, 最高齢者は92歳であった。全身疾患を有する患者は504名 (85.4%) であり, そのうち最も多かったのは精神分裂病258名 (43.7%) 次いで多かったのはアルコール依存症43名 (7.3%) であった。
    主訴に対する歯科疾患で最も多かったのは92名 (15.6%) の歯牙欠損であり, 次いで多かったのはう蝕の88名 (14.9%) であった。治療内容で最も多かったのは抜髄 (82名・13.9%), 次に多かったのは有床義歯作製 (78名・13.2%) であった。
  • 西川 典良, 西山 知英, 生内 泰子, 高田 静治, 瀧田 正亮
    1996 年 5 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回我々は精神科疾患を有する患者の口腔外科治療を3例経験したので, その概要を報告した。症例1は抑うつ神経症の患者, 症例2は精神分裂症の患者で, 2例とも精神科疾患が受傷の原因と考えられた下顎骨骨折例であった。症例3はアルコール依存性うつ状態の患者で, 舌に自傷による舌壊疽を形成した症例であった。治療に際しての患者の承諾は, 3例とも本人から直接は得られなかったが, 精神科主治医や家族の理解, 協力のもとに治療を行い良好な結果が得られた。なお, 症例3は他の精神科病院からの依頼で, 看護士の付き添いのもとに当科で通院治療を行い軽快した。いずれの症例も顎・口腔疾患に対する精神科主治医の理解と協力なくしては口腔外科治療を行えなかったと思われた。
  • 加藤 雅民, 磯部 誠, 神谷 祐二, 大谷 端夫
    1996 年 5 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    脳血管障害は, 脳を灌流する血管の病変による脳の機能的, 器質的障害をもたらす疾患である。近年同疾患の予後が改善し, 発症後長期の生存が可能となったものの, 何らかの後遺症を有する場合が少なくない。今回著者らは脳血管障害の後遺症を有しており, 自他覚症状が不明瞭なため陳旧性となった顎関節脱臼の2症例に対し, 全身麻酔下で徒手整復後, 再脱臼防止のため顎関節前方障害形成術を行なったので, その概要について報告する。症例1は1年10カ月, 症例2は1年2カ月, 再脱臼を認めず, 経過良好である。処置にあたっては, さまざまな障害を有しているため, 術前の十分な全身状態の把握と慎重な術式の選択が重要である。
  • 小森 康雄, 伊能 智明, 後藤 有里, 松田 憲一, 入野田 昌史, 竹部 幹浩, 山田 容三, 小川 隆, 千葉 博茂
    1996 年 5 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Antiphospholipid syndrome (以下Aps) は, 臨床症状として静脈血栓症, 動脈血栓症, 習慣性流産, 血小板減少症などを呈し, 検査上ではLupus anticoagulantまたは中濃度以上のIgGかIgMの抗カルジオリピン抗体の陽性によって診断される比較的新しい疾患概念である。
    今回われわれはITP患者に合併したApsと思われる症例を経験したので, 報告する。
    患者は70歳女性で, 約8年前打撲により広範な皮下出血斑出現のため近医受診し, 検査にて血小板減少を指摘された。同医より某大学病院に紹介されITPの診断を受けた。平成6年4月頃より8〓の疼痛を自覚し抜歯を希望するも, 平成4年に〓8抜歯の際, 後出血がみられた既往があった。
    術前検査で血小板数は4.6×104/μlと低値を示した以外に, 凝固系検査でPTTが200sec (対照100sec) と延長しており, 後日の再検査でもAPTT 115sec (対照50sec) と異常値を示した。同時に測定した凝固因子量でもFVIII 25%, FIX 23%, FXI 58%, FXII 18%といずれも極めて低値を示し, 一見多凝固因子欠乏の様相を呈した。APTT補正試験では, 既知凝固因子欠乏血漿が正常血漿1/4添加でほぼ補正されたのに対し, 患者血漿は3/4添加でも完全に補正されず, 何らかの抗凝血素の存在が強く疑われた。そこでLupus anticoagulant (LA) と抗カルジオリピン抗体の検索の結果, LA陽性および抗カルジオリピンIgG抗体が中濃度以上検出され, Apsと考えられた。
  • 透析患者に対する口腔外科手術の2症例
    佐野 次夫, 山田 猪熊, 高久 暹
    1996 年 5 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 透析療法が進歩し, 慢性透析患者の10年生存率が7割を越えた現在, 透析経過中に手術対象疾患に罹患する機会も増加してきている。そのため, 腎不全患者が歯科医療機関を受診する機会が増加し, 腎不全の病態生理をふまえた対応が必要とされている。一般に透析患者は高度な腎機能障害があり, 出血傾向, 創傷治癒の遅延, 易感染性などの病態を有し, そのため, 外科治療にあたっては, 十分な診断, 手術法の決定, 術前・術中・術後管理が必要とされている。今回われわれは, 他院から紹介された2名の透析患者の口腔外科手術を行う機会を得たので, その概要を含め, 顎口腔領域疾患における治療上の問題点について, 若干の考察を加えて報告した。
  • 岡本 吉彦, 岡本 真澄, 岡本 吉晴, 杉村 正仁, 松浦 英夫
    1996 年 5 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 医学の進歩や医療の普及に伴い, 人の平均寿命が延び, 高齢者はもちろんのこと, 現在さまざまな全身疾患を有する患者が一般歯科外来を受診する事が多くなっている。
    今回われわれは, 一般開業医において歯科治療直前に脳梗塞発作を発症し, 救急搬送の後, 救命しえたものの2カ月後に死亡した症例を報告する。患者は69歳, 女性で, 左側上顎犬歯根尖性歯周炎のため, 根管治療の予定であった。既往歴としては, 20年前より高血圧を指摘され投薬治療を受けていた。また, 3年前に心不全および心室性期外収縮, 半年前に左下肢血栓および心房細動があった。
    治療当日, 患者は家族に送られて来院し, 待合室で待機。独歩にて診療室に入室し, チェアーに着席時, 着座位置が少しずれていたため, 声をかけたところ応答がなかった。その際, 呼名に対しても反応せず, さらにいびき呼吸を呈しだした。そこで脳卒中を疑い, 救急隊の出動を依頼した。口腔内より義歯を取り除き, 気道確保を行い, 酸素投与を行った。そして, パルスオキシメーターにより酸素飽和度と心拍監視を開始した。静脈路を確保し, 薬剤の投与に備えた。救急隊到着後, 経鼻エアウェイを挿入し, ただちに奈良県立医科大学付属病院に搬送した。
    CTにより脳幹から, 後頭葉にかけての多発性脳梗塞と診断された。担当医によれば, 意識の回復はまず見込めないとの事であった。その後内科治療を続けたが, 脳梗塞発症2カ月後死亡した。
  • 森田 武, 別部 智司, 木下 径彦, 三浦 一恵, 雨宮 義弘, 瀬戸 皖一
    1996 年 5 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    高血圧症や狭心症の治療薬で広く臨床応用されているCa拮抗剤であるニフェジピンの長期服用による歯肉増殖症の3例を経験した。
    症例1・2ではTBI・除石および薬剤変更により治癒した。症例3ではTBI・除石および薬剤変更を行うも症状の顕著な変化がみられなかった。そのため, 歯肉切除術および抜歯を行い早期の補綴処置に努めた。その結果症状の改善がみられた。
    本研究よりニフェジピンによる歯肉増殖症の治療法としては, まずブラッシング指導・除石および薬剤変更を行う。また, 保存治療で症状が改善しない場合や歯肉増殖が著しくプラークコントロールが形態的に困難である場合には歯肉切除や保存不可能と考えられた歯の抜歯等の外科処置も併用する。さらに, 早期に補綴処置を行う方が口腔衛生および咀嚼回復上好結果をもたらされると考えられた。
  • 秋山 正利, 三宅 正彦, 工藤 逸郎, 見崎 徹, 京田 直人, 金山 利吉
    1996 年 5 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回, 著者らは薬剤に対してアレルギー症状を呈した4症例を経験した。
    第1例: 各種薬剤や食物に対してアレルギー症状を呈した既往歴を有する患者に対して, 術前検査とステロイド剤投与などの予防手段を施行のうえ, 左側上顎第1およひ第3大臼歯の抜歯を行ったところ, 局所麻酔薬として使用したリドカインに対して軽度なアレルギー症状が発現した。
    第2例: 歯槽整形術施行後に塩酸タランピシリンを内服したところ, 内服数分後に重篤なアナフィラキシーショックをおこし一時的に意識を喪失し, 全身痙攣や, 血圧の著しい低下など対応に苦慮した。
    第3例および第4例: 急性炎症の消炎のために静脈内に投与したラタモキセフナトリウムに対してアレルギー症状を呈した。
    以上のうち第3例は薬剤アレルギーの既往を有さない患者である。
    また, 第2例以外は術前の皮内反応検査を施行したが, 第1例では薬剤を希釈したにもかかわらず顔面まで紅潮するほどの陽性反応を示した。第3例および第4例では陰性であったにもかかわらずアレルギー症状を呈した。
    今回の結果から皮内反応検査の信頼性は十分でないことが認識され, 薬剤投与にあたっては慎重な対応が必要であると思われた。
  • 飯田 啓介, 竹本 隆, 石原 朗, 金子 道生, 吉田 憲司, 深谷 昌彦
    1996 年 5 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    薬剤起因性の出血性大腸炎は, 薬剤投与後数日で突発する腹部疝痛, 激しい下痢, 血便などを主症状とする医原性疾患である。
    今回著者らは, 抗生物質投与後に出血性大腸炎と思われた1例を経験したので報告する。
    患者は, 36歳の女性で, 埋伏智歯抜歯術を施行した。術後, 感染予防を目的にaspoxicillinを投与したところ, 術後4日目に激しい下腹部痛および血性茶褐色水様便が15回みられ, 術後5日目には同様の便が31回みられた。同日に行った糞便の細菌検査では, Clostridium difficile D-1抗原は陰性であった。抗生物質の中止, 絶食, 輸液を行い, 術後11日目には回復した。以上の所見より薬剤に起因した出血性大腸炎と思われた。
  • 竹内 伸一, 石原 朗, 足立 守安, 岩田 浩行, 小谷 英二, 高井 克憙
    1996 年 5 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 舌血管腫摘出術後に急性尿閉となった1症例を経験した。患者は83歳男性で, 潜在的な前立腺肥大症であり, 舌血管腫摘出術後に急性尿閉になった。われわれはバルーンカテーテルによる導尿を行った。
    後日, バルーンカテーテル除去を行うも尿閉は改善せず, 泌尿器科へ転院とした。同科にての臨床診断は前立腺肥大症であり, 後日, 前立腺摘出術を受け, 摘出された前立腺はかなり肥大していた。
    今回の急性尿閉の誘因としては, 前立腺肥大症の潜在, 薬剤性排尿障害, 術後の疼痛, 緊張等による交感神経緊張, 心理的要因など複数の因子が重なり合って発症したものと考えられた。
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