真菌と真菌症
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Phycomycosis (いわゆるムコール症) 菌学の面から
倉田 浩
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1978 年 19 巻 2 号 p. 89-93

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抄録

ヒトおよび動物の藻菌類 Phycomycetes に属する真菌が原因する感染症を総称して, いわゆるムコール症と呼んでいたが, 実際には, Mucorales ケカビ目に所属する真菌だけが真菌症を起すのみでなく, Entomophthorales ハエカビ目に属する Basidiobolus, Conidiobolus 属菌らに原因する疾患も, 極めて僅かな例ではあるが知れているので, ムコール症は, Mucor, Absidia, Rhizopus, Mortierella 属らのケカビ目による疾患にのみ適用することにし, 若し, ケカビ目とハエカビ目の両者による疾患を併せてよぶ必要がある場合は, Ajello らの提案する zygomycoses 接合菌症を使用するのが適当と考えられる.
近年, Alexopoulos 以来, 従来用いられてきた Phycomycetes なる名称がなくなり, 最近では, Mastigomycotina 鞭毛菌類, Zygomycotina 接合菌類の2つの亜門 sub-division がこれに変つてしまつた. しかし, 旧 Phycomycetes に属するすべての真菌による疾病を総括する必要のある時の呼称は, これに変わるべき適当な用語がないことから, Emmons らが言う The Phycomycoses 藻菌症を, そのまま残して使用することにしてはどうかと提案する. 次いで, 現在までに種々の異名でよばれるケカビ目に属する病原真菌を同義語の立場から整理を試みたので, 表示し参考に供した.

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