抄録
健康人および癜風患者の健常皮表におけるは Pityrosporum の検出頻度と形態を角層剥離法を用いて検索し, 次のような成績が得られた. 1) 生後1ヵ月から85歳までの若干の皮膚疾患患者を含む健常人189名について, 額と胸の2ヵ所からえた剥離標本計375例を検鏡した. 菌陽性は292例 (77.9%) で, 全例 Pityrosporum orbiculare が検出された. P. ovale は単独例なく, 47例において P. orbiculare と混在して認められた. 胞子が群生して増殖形態を示したものは137例 (36.5%), 菌糸形が認められたものは49例 (13.0%) であつた. 部位別検出率は額79.6%, 胸76.2%で, 年齢別検出率では1~9歳において有意に低率を示した. 2) 第1~9日齢の新生児52名の健常皮表では P. orbiculare は29名 (55.8%) において検出された. 産褥中の母親39名からは94.9%において P. orbiculare が検出され, 新生児皮表の Pityrosporum は母親由来と推測された. 3) 癜風患者9名の健常皮表では, 菌糸形が額では全例において, 胸では66.7%に認められ, 対照と比較して有意に高率を示した. 4) 癜風皮疹の隣接部位18例では菌要素は全例に陽性で, 癜風病巣類似の菌要素が55.5%に認められ, 潜在性癜風というべき所見であつた.