真菌と真菌症
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21 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 宗 義朗, 大郷 典子, 土井 顕, 松田 良夫
    1980 年 21 巻 3 号 p. 143-150
    発行日: 1980/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    われわれは先に Pityrosporum (P.) ovaleP. orbiculare の栄養要求と生理学的性質は全く同一であることを報告したが, 今回さらに形態面から検討し, 次のような結果をえた. P. orbiculare の典型的な円形の胞子の単胞子培養を行うと, 円形の胞子のほかに, フラスコ型の胞子を生じ, さらに培養を重ねると次第に P. ovale 様となつた. フラスコ型胞子の単胞子培養では円形の胞子の場合よりも早期に P. ovale 様となつた. P. ovale の単胞子培養では P. orbiculare 様にはならなかつた. それ故 P. orbiculare の円形の胞子からフラスコ型の胞子を生じ, これから ovale 様の胞子を生じるものと思われる. 人体に P. orbiculare を接種すると, M. furfur 様の菌糸を生じ, P. ovale を接種すると orbiculare 型の胞子を生じた. アミノ酸加 Czapek Dox 寒天に P. orbiculare を接種すると菌糸の形成がみられ, とくに isoleucine ではこの傾向が著明であつた. 以上の点から両菌は発育条件により, どちらの型もとりうることが出来, 菌糸もまた形成されることが明らかとなつた. そのほか両者および M. furfur は電顕的微細構造に差がなく, 染色性や抗原性にも差はなく, 人体に P. orbiculare を接種して癜風を生じうること, 澱風病巣から常に P. orbiculare が高率に培養されることなどから, これら3菌は同一の菌であると思われる. しかし P. pachydermatis は好脂質性ではなく, 抗原性も異つている. それ故この属の名称は優先権の点から Pityrosporum を廃して, Malassezia とすべきであり, 次のように分類するのが正しいと思われる. Malassezia furfur (Robin) Baillon 1884, Malassezia pachydermaris (Weidman) Dodge 1935
    種々の抗真菌剤や基剤材料についてMIC, MCCを測定した結果, 一般に抗菌力は ovale 型の菌や M. pachydermatis よりも orbiculare 型の菌に強くみられ, clotrimazole, econazole, amphotericin B, SeS2, phenyl iodo undecynoate および pimaricin では低いMIC, MCCを示したが, サリチル酸, tolnaftate, siccanin, griseofulvin や actidion でのMICは高かつた. また methanol, ethanol, propylene glycol, polyethylene glycol 400および4,000などの基剤材料もかなりの抗菌力を示した.
  • 金原 武司, 斎藤 利子, 加納 千栄美, 小林 博人
    1980 年 21 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 1980/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    健康人および癜風患者の健常皮表におけるは Pityrosporum の検出頻度と形態を角層剥離法を用いて検索し, 次のような成績が得られた. 1) 生後1ヵ月から85歳までの若干の皮膚疾患患者を含む健常人189名について, 額と胸の2ヵ所からえた剥離標本計375例を検鏡した. 菌陽性は292例 (77.9%) で, 全例 Pityrosporum orbiculare が検出された. P. ovale は単独例なく, 47例において P. orbiculare と混在して認められた. 胞子が群生して増殖形態を示したものは137例 (36.5%), 菌糸形が認められたものは49例 (13.0%) であつた. 部位別検出率は額79.6%, 胸76.2%で, 年齢別検出率では1~9歳において有意に低率を示した. 2) 第1~9日齢の新生児52名の健常皮表では P. orbiculare は29名 (55.8%) において検出された. 産褥中の母親39名からは94.9%において P. orbiculare が検出され, 新生児皮表の Pityrosporum は母親由来と推測された. 3) 癜風患者9名の健常皮表では, 菌糸形が額では全例において, 胸では66.7%に認められ, 対照と比較して有意に高率を示した. 4) 癜風皮疹の隣接部位18例では菌要素は全例に陽性で, 癜風病巣類似の菌要素が55.5%に認められ, 潜在性癜風というべき所見であつた.
  • 今村 貞夫, 古川 福実, 段野 貴一郎, 田中 玄明
    1980 年 21 巻 3 号 p. 157-161
    発行日: 1980/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    癜風の病原菌である Malassezia furfurPityrosporum 属との異同を明らかにする目的で, まずP属相互間の抗原性を Ouchterlony 板を用いて検討したところ, P. orbiculareP. ovale は極めて近い関係にあるが, P. canis はかなり異つたものと考えられた. 次に抗 P. orbiculare 血清を用いて, 螢光抗体間接法により検索したところ, M. furfur は, P. orbiculareP. ovale と抗原性において極めて近いものであることが判明した.
    癜風病巣18例の生検を行い, 角層内に存在する M. furfur に対する生体の反応性をしらべたところ, 表皮肥厚が13例にみられたが, 真皮上層や表皮内への遊走細胞の浸潤はほとんどみられなかつた. P. orbiculare に対する血清抗体を癜風患者と健康人について, 感作赤血球凝集反応と螢光抗体法を用いて測定したところ, その抗体価には, 両群の間に顕著な差を見出し得なかつた.
  • 第1報 Trichophyton 属の N-Acetyltyramine Deacetylase について
    田中 豊夫, 芥川 公昭, 牧野 実, 福田 弘子, 安藤 襄一
    1980 年 21 巻 3 号 p. 162-171
    発行日: 1980/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    皮膚病原真菌特に T. mentagrophytes IFO 7522株 T. rubrum IFO 6203株および T. megninii No. 1株の3菌種の dried powder (一部: 粗無細胞酵素液) を酵素標品として N-acetyltyramine の脱アセチル化作用を検討し次の結果を得た. (1) この酵素の至適pHは7.5~8.0, 至適反応温度は37℃であることを認めた. (2) この酵素の活性は金属イオン (1mM) によつて抑制された. すなわち, Ag+, Cu++, Hg++, Zn++, Cd++により著明に, Ca++, Mg++, Co++, Fe++, Mn++により弱く抑制された. また, p-chloromercuric benzoate (PCMB: 0.25~1mM) によつても著明に抑制された. (3) PCMB (1mM)処理によつて失活した酵素活性はSH-試薬である glutathione-SH および L-cysteine (1~10mM) の添加によつて前者では最高30.0%, 後者では27.5%再賦活するのが認められた. ゆえに, この酵素はSH-酵素に属するものと思われる. (4) この酵素標品のKm値は2.3mM (T. mentagrophytes IFO 7522株), 2.0mM (T. rubrum IFO 6203株)および1.8mM (T. megninii No.1株) であることが認められた. (5) Trichophyton属のこの酵素活性能の強さは T. mentagrophytes IFO 7522株, T. rubrum IFO 6203株 T. megninii NO. 1株の順であつた. また, Trichophyton 属の酵素活性能は K. pneumoniae No. 1株の約1/10であつた. (6) この酵素の活性は供試皮膚病原真菌類並びに供試腸内細菌類の全株において認められた. (7) この酵素は基質として用いた N-acylamino acid (N-acetyl-L-tyrosine amide, N-acetyl-L-alanine, N-acetyl-D・β-phenylalanine, N-acetylglycine, N-acetyl-L-aspartate) の脱アセチル化作用を触媒しなかつた. (8) この酵素は N-acetyltyramine amidohydrolase: N-acetyltyramine deacetylase であり, 次の反応系を触媒する.
    N-acetyltyramine deacetylaseN-acetyltyramine→tyramine
  • 猪俣 賢一郎, 泉 和夫, 平林 和明, 大山 満, 愛甲 隆俊, 時任 純孝, 小川 和朗
    1980 年 21 巻 3 号 p. 172-177
    発行日: 1980/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    慢性の髄膜炎徴候を示し, 脳内に大きな占拠性病巣を形成するためにしばしば脳腫瘍, 結核性髄膜炎に誤診される可能性のあるクリプトコックス髄膜脳症を経験したので報告する. 症例は38歳女子で, 頭痛と全身倦怠感を初発症状とし約1ヵ月後意識障害出現したため脳疾患救急センターへ搬送された. 腰椎穿刺にて脳脊髄圧が高く脳圧亢進症状もみられたため, 脳圧ドレナージ施行するなど治療がなされたが入院第7病日鬼籍入りした. 腰椎穿刺と脳室ドレナージより得られた脳脊髄液培養検査から Cryptococcus neoformans が同定された. 脳のみの病理解剖が実施され, 髄膜は灰黄白色で膠様外観を呈し肥厚傾向にあり, 前額断面脳で, 粘液様で光沢のある内容を有する境界鮮明な小嚢胞が孤立性に大脳基底核や小脳歯状核に認められた. 小嚢胞はその周囲に組織反応としての炎症性細胞浸潤, グリオーシスの形成はなく, 嚢胞内に莢膜をもつ Cryptococcus neoformans がみられ, この莢膜の周囲にコロナ状の棘が確認された. 膠様病巣を示したクリプトコックス髄膜脳症を報告したが, 臨床的に髄膜刺激症状があり, 感染症が疑われるけれども未だ菌が証明されない場合先ずクリプトコックス髄膜脳症を疑い早期に対策を講ずる必要があると思われる.
  • 宮本 力, 奥田 徹, 池田 敦子, 丸山 博己
    1980 年 21 巻 3 号 p. 178-183
    発行日: 1980/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Cryptococcus neoformaus, Aspergillus 属および Candida 属を検定菌として用いた平板上で, 5-FC感受性ディスク (1μg含有) により形成された阻止円とMICの間に直線関係が得られ, 5-FC感受性ディスクを用いて簡便にMICを求める事ができた. 前2者の検定菌では, Mycoplateを用いた場合, YMAと較べて阻止円が小さくなる傾向を示したが, 後者の検定菌では両プレートで同程度の阻止円が得られた. Fonsecaea pedrosoi および Phialophora 属については, 対照と1μgおよび100μg 5-FC感受性ディスクを置いたプレートを比較する事により, 大まかなMICが推定できた.
  • 生冨 公明, 西川 武二, 中山 秀夫
    1980 年 21 巻 3 号 p. 184-187
    発行日: 1980/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    著者らは最近, Microsporum audouinii によるケルズス禿瘡の6歳外国人男子例 (スーダン国籍) を経験した. 患者は大使館員家族で, 原因菌は外国由来と考えられた. 本邦報告例を検討したがいずれも菌学的記載に乏しく, 著者らの例が Microsporum audouinii によるケルズス禿瘡の本邦第1例と考えた.
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