われわれは先に
Pityrosporum (
P.)
ovale と
P. orbiculare の栄養要求と生理学的性質は全く同一であることを報告したが, 今回さらに形態面から検討し, 次のような結果をえた.
P. orbiculare の典型的な円形の胞子の単胞子培養を行うと, 円形の胞子のほかに, フラスコ型の胞子を生じ, さらに培養を重ねると次第に
P. ovale 様となつた. フラスコ型胞子の単胞子培養では円形の胞子の場合よりも早期に
P. ovale 様となつた.
P. ovale の単胞子培養では
P. orbiculare 様にはならなかつた. それ故
P. orbiculare の円形の胞子からフラスコ型の胞子を生じ, これから
ovale 様の胞子を生じるものと思われる. 人体に
P. orbiculare を接種すると,
M. furfur 様の菌糸を生じ,
P. ovale を接種すると
orbiculare 型の胞子を生じた. アミノ酸加 Czapek Dox 寒天に
P. orbiculare を接種すると菌糸の形成がみられ, とくに isoleucine ではこの傾向が著明であつた. 以上の点から両菌は発育条件により, どちらの型もとりうることが出来, 菌糸もまた形成されることが明らかとなつた. そのほか両者および
M. furfur は電顕的微細構造に差がなく, 染色性や抗原性にも差はなく, 人体に
P. orbiculare を接種して癜風を生じうること, 澱風病巣から常に
P. orbiculare が高率に培養されることなどから, これら3菌は同一の菌であると思われる. しかし
P. pachydermatis は好脂質性ではなく, 抗原性も異つている. それ故この属の名称は優先権の点から
Pityrosporum を廃して,
Malassezia とすべきであり, 次のように分類するのが正しいと思われる.
Malassezia furfur (Robin) Baillon 1884,
Malassezia pachydermaris (Weidman) Dodge 1935種々の抗真菌剤や基剤材料についてMIC, MCCを測定した結果, 一般に抗菌力は
ovale 型の菌や
M. pachydermatis よりも
orbiculare 型の菌に強くみられ, clotrimazole, econazole, amphotericin B, SeS
2, phenyl iodo undecynoate および pimaricin では低いMIC, MCCを示したが, サリチル酸, tolnaftate, siccanin, griseofulvin や actidion でのMICは高かつた. また methanol, ethanol, propylene glycol, polyethylene glycol 400および4,000などの基剤材料もかなりの抗菌力を示した.
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