真菌と真菌症
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病原性黒色酵母の系統発生
西村 和子
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1982 年 23 巻 2 号 p. 122-131

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抄録

病原性黒色酵母 Exophiala jeanselmei, E. gougerotii, E. dermatitidis および E. spinifera の分生子形成法を走査電顕を用いて検索し, Phialophora richardsiae. P. parasitica および P. repens のそれと比較検討した. Exophiala の前3菌種の分生子形成法はほぼ同じで, 分生子形成細胞先端に生じた1ないし数個の小突起より分生子が連続的求基的に産生されていた. 小突起は少しずつ伸びながら分生子を産生し, その壁には分生子が離れる度にレースの縁飾り状の環紋が形成されていた. 菌糸側壁においても同様の機序で分生子が産生され, 環紋が形成されていた. E. spinifera の分生子形成も同様であつたが, 小突起は分生子形成細胞あるいは菌糸側壁に1個ずつ生じ,長く多数の環紋が認められるのが特徴であつた. これら Exophiala の分生子形成法は Phialophora のそれとは明らかに異なつていた. E. jeanselmei, E. gougerotii は共に37℃における発育が抑制され, 生物学的性状においても差は認められなかつた. E. dermatitidis は37℃にて良好に発育し, KNO3資化能が劣つている点で前2菌種と異なつていた. Exophiala 4菌種はウレアーゼ陽性, GC含量は50~60%であつた. 分生子形成法に関する所見および生物学的性状, GC含量の結果から, Exophiala と担子菌酵母との関連性が示唆された.

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