近年病原真菌の完全世代が次第に発見されその分類や系統発生について多くの研究が展開されるに至つている.
Cryptococcus neoformans の完全世代は担子菌類, 冬胞子菌類, ウスチラギナレス目のフィロバシデアセアエ科に属する
Filobasidiella 属に一応分類されている. 本邦で犬や猫の病変部から分離した
C.neoformans 6株は不明の1株を除いてすべて
Filobasidiella neoformans のα株で, 血清型はA型であつた.
皮膚糸状菌のうち完全世代の認められているものは, 子嚢菌類, 不整子嚢菌類, 裸生子嚢菌科の
Arthroderma 属と
Nannizzia 属に分類されている. このうち本邦に常在すると考えられる菌は, 土壌生息性である
Microsporum gypseum と動物寄生性である
M. canis と
Trichophyton mentagrophytes である.
M. gypseum では動物から分離の菌は
N. gypsea と
N. incurvata で, その分離株はいずれも+株と-株がほぼ同数であつた.
M. canis の犬と猫から分離した株の完全世代は
N. otae で, そのほとんどが-株で, +株はわずかに3株でその頻度に著しい差異がみられた.
T. mentagrophytes の完全世代としては,
A. vanbreuseghemii のみで, ラット, ハムスター, スナネズミおよび猫由来の株で確認され, その多くは+株であつた.
以上本邦における動物のクリプトコックス症と皮膚糸状菌症の原因菌について, その完全世代を検索した結果を紹介し, これら病原菌の完全世代に関する問題点を考察した.
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