真菌と真菌症
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23 巻, 2 号
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  • 化学構造と生物活性
    河合 清, 野沢 義則
    1982 年 23 巻 2 号 p. 101-115
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    病原性真菌により産生される色素の化学構造および生物活性について, 現在までに得られている知見を, 筆者らの研究成績を中心に紹介した. 病原性真菌が多種類の色素を産生することは古くから知られており, 比較的大量に産生される色素については順次, 構造が解明されつつある. 構造の解明された色素はナフトキノンまたはナフトキノン様構造をしていること, ラクトン環を持つていること, および二量体構造をしていることなどの特徴をもち, 一般腐生菌産生色素のように, 構造的に変化に富むことなく, お互いにかなり類似した構造をもつている点, 興味深い. このうち数種類の色素が腐生菌により産生されることが判明し, xanthomegnin や viomellein について, 強い肝臓毒作用を有することが示唆された. ところが, これらの色素の生物活性に関する知見は殆んど無い. そこで脂溶性の強い色素 xanthomegnin および floccosin の生物活性について,キノン構造およびフェノール性水酸基に着目して,ラット肝ミトコンドリアのATP合成系に与える影響を検討し, 両色素が, 単離肝ミトコンドリアの酸化的リン酸化反応に対して強力な除共役作用を示すことが明らかになつた. なお, フェノール性水酸基のH+解離性 (ミトコンドリア内膜の電気化学的ポテンシャルの消去) ならびにキノン構造に基く酸化還元反応 (電子伝達反応の短絡化) などについても詳細な検討を加えた.
  • 宮治 誠
    1982 年 23 巻 2 号 p. 116
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 長谷川 篤彦
    1982 年 23 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    近年病原真菌の完全世代が次第に発見されその分類や系統発生について多くの研究が展開されるに至つている.
    Cryptococcus neoformans の完全世代は担子菌類, 冬胞子菌類, ウスチラギナレス目のフィロバシデアセアエ科に属する Filobasidiella 属に一応分類されている. 本邦で犬や猫の病変部から分離した C.neoformans 6株は不明の1株を除いてすべて Filobasidiella neoformans のα株で, 血清型はA型であつた.
    皮膚糸状菌のうち完全世代の認められているものは, 子嚢菌類, 不整子嚢菌類, 裸生子嚢菌科の Arthroderma 属と Nannizzia 属に分類されている. このうち本邦に常在すると考えられる菌は, 土壌生息性である Microsporum gypseum と動物寄生性である M. canisTrichophyton mentagrophytes である. M. gypseum では動物から分離の菌は N. gypseaN. incurvata で, その分離株はいずれも+株と-株がほぼ同数であつた. M. canis の犬と猫から分離した株の完全世代は N. otae で, そのほとんどが-株で, +株はわずかに3株でその頻度に著しい差異がみられた. T. mentagrophytes の完全世代としては, A. vanbreuseghemii のみで, ラット, ハムスター, スナネズミおよび猫由来の株で確認され, その多くは+株であつた.
    以上本邦における動物のクリプトコックス症と皮膚糸状菌症の原因菌について, その完全世代を検索した結果を紹介し, これら病原菌の完全世代に関する問題点を考察した.
  • 西村 和子
    1982 年 23 巻 2 号 p. 122-131
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    病原性黒色酵母 Exophiala jeanselmei, E. gougerotii, E. dermatitidis および E. spinifera の分生子形成法を走査電顕を用いて検索し, Phialophora richardsiae. P. parasitica および P. repens のそれと比較検討した. Exophiala の前3菌種の分生子形成法はほぼ同じで, 分生子形成細胞先端に生じた1ないし数個の小突起より分生子が連続的求基的に産生されていた. 小突起は少しずつ伸びながら分生子を産生し, その壁には分生子が離れる度にレースの縁飾り状の環紋が形成されていた. 菌糸側壁においても同様の機序で分生子が産生され, 環紋が形成されていた. E. spinifera の分生子形成も同様であつたが, 小突起は分生子形成細胞あるいは菌糸側壁に1個ずつ生じ,長く多数の環紋が認められるのが特徴であつた. これら Exophiala の分生子形成法は Phialophora のそれとは明らかに異なつていた. E. jeanselmei, E. gougerotii は共に37℃における発育が抑制され, 生物学的性状においても差は認められなかつた. E. dermatitidis は37℃にて良好に発育し, KNO3資化能が劣つている点で前2菌種と異なつていた. Exophiala 4菌種はウレアーゼ陽性, GC含量は50~60%であつた. 分生子形成法に関する所見および生物学的性状, GC含量の結果から, Exophiala と担子菌酵母との関連性が示唆された.
  • 山口 英世, 平谷 民雄, 大隅 正子, 岩田 和夫
    1982 年 23 巻 2 号 p. 132-142
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Candida albicans における変異株の誘発, 分離法, および分離された種々の栄養要求変異株の性状を総説的に述べた. とくに著者らが臭化エチジウムによつて誘発して得られた非染色体性呼吸欠損変異株について, その呼吸代謝上ならびに同定上の特徴を詳細に比較検討し, 呼吸活性とマウスに対する毒力との間に密接な関係があることを示唆した.
  • 羽柴 輝良
    1982 年 23 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    細胞融合, 遺伝子操作などによる遺伝学的研究に利用する目的で, 植物病原真菌, Rhizoctonia solani 菌菌糸から高収量でプロトプラストを分離・精製する方法を検討した. ジャガイモ煎汁液体培地に15時間静置培養した若い菌糸をβ-グルクロニダーゼ, 0.06ml/ml, セルラーゼ・オノズカR-10,20mg/ml, マセロチームR-10,5mg/mlを含むpH5.2の0.6Mマニトール液中でゆるやかに振とうしながら32℃に保つと, 遊離プロトプラストは3時間後に最高に達した. 150μmスチール網でろ過後, 700×g, 5分間遠心を行い粗プロトプラストを集めた. 粗プロトプラストの精製は0.6Mマニトール2mlに粗プロトプラストを懸濁し, 0.6M蔗糖液4mlの上に静かに積層し, 200×g, 5分間の遠心を行い, 二層の界面に精製したプロトプラストを集めることができた. この方法で菌糸の生重1gから6.0×107個のプロトプラストが得られた. 本方法を用いて, 菌核を形成せず, 病原性を持たない菌株 (Sc-株) からプロトプラストの融合によつて合成株の作出を行つた. Sc-株同士から作出した合成株の中に菌核を形成する株, および病原性を示す株が現われ, 安定した合成株が得られた.
  • 江川 政昭, 高橋 博之, 石原 紘, 矢村 卓三, 三上 襄, 加治 晴夫, 新井 正
    1982 年 23 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    症例. 39歳, 男, 入院の約1年前, 背部に軽い擦過傷を含む打撲症を受け, その後同部に紫紅色の板状硬結, 小膿瘍が生じ, 治癒せず徐々に臀部, 下肢・上肢に多発し, 昭和54年1月当科に入院. 入院時, 膿瘍より1mm×2mmの黄白色の顆粒が排出し, 顆粒の塗抹染色鏡検にて, グラム陽性の分枝状糸状菌体, 桿菌および球菌様菌体が認められた. 膿, 顆粒, 生検組織の嫌気性培養にて, グラム陽性, 非抗酸性の桿菌様菌体が認められ, Actinomyces と考えた. 皮膚病変以外には顎, 顔面部, 胸腹部に異常を認めず, 原発性皮膚放線菌症と診断した. ペニシリンの長期, 大量投与により, 約6ヵ月後に完治した. 原発性皮膚放線菌症は非常に珍しく, 我々の調べたかぎりでは, そのほとんどが欧米の報告であり, 日本ではまだ報告されていない. 放線菌症の感染経路は, 内因性であるといわれているが, 原発性皮膚放線菌症に関しては, 外傷に続発した症例も報告されており, Actinomyces 以外の菌による感染も考えられた.
  • Koh Yano, Tomiyasu Yamada, Yoshiko Banno, Takashi Sekiya, Yoshinori No ...
    1982 年 23 巻 2 号 p. 159-165
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Alterations in phospholipid and fatty acid composition of Candida albicans were examined during the yeast cell to hypha transformation. The major phospholipids separated by thin layer chromatography were phosphatidylcholine, phosphatidylethanolamine, and phosphatidylinositol/phosphatidylserine. Large increments of relative amounts of phosphatidylcholine and phosphatidylethanolamine with a profound decrement of phosphatidylinositol/phosphatidylserine were found to occur within 3 to 5h after the induction of the conversion. There was a great increase in linoleic (18:2) acid in all phospholipids, especially in phosphatidylcholine, with a compensatory decrease in the monounsaturated fatty acids. These alterations were considered to be confluent in the direction of increasing the degree of unsaturation, as ascertained by measuring the unsaturation indices. These alterations in cellular lipid composition were observed to coincide with the rapid elongation of the germ tubes. These results suggest that modification of membrane lipid composition might be associated with the transformation from yeast cell to hypha in C. albicans.
  • 月永 一郎, 三浦 祐晶, 小野塚 〓
    1982 年 23 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Cushing 症候群に合併した black dot ringworm を経験した. 原因菌は本症としては比較的稀な Trichophyton rubrum であつた. 症例は49歳, 札幌在住の主婦. 初診, 昭和55年1月14日. 初診の約1年ほど前から全身に貨幣大の落屑性紅斑が多数出現し, それと前後して爪と頭毛の変化も出現した. また患者は3年前より高血圧, 四肢の浮腫, 体重増加があり内科で Cushing 症候群の診断をうけている. 手指の爪の白濁・肥厚を認め, 頭部は頭頂部から後頭部にかけて毛髪が疎となり black dot を多数認める. 頭部の black dot の直接鏡検で毛内大胞子型の寄生を示した. 病毛の培養では発育の遅い濃紫色の隆起性集落をえた. コーンミール寒天培地で濃紫色の色素を産生, スライド培養ではゴマ状の小分生子と腸詰様の大分生子を認め Trichophyton rubrum と同定した. 本邦における black dot ringworm の報告は1981年5月まで63例あるが, Trichophyton rubrum によるものは3例のみである.
  • 皆川 治重, 北浦 晧三, 峯浦 和幸, 丸茂 博大
    1982 年 23 巻 2 号 p. 171-180
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    合成抗真菌剤 Ketoconazole (KCZ) の抗菌スペクトルはきわめて幅広く, 106cells/mlの菌液を接種した際のMIC値の幾何平均値は, Candida albicans に71.6μg/ml, その他の Candida 属菌種に0.62~80μg/ml, Candida 属以外の酵母および酵母様真菌に1.76~7.94μg/ml, 皮膚糸状菌に0.63~20μg/ml, 黒色糸状菌に1.25~25μg/ml, Aspergillus 属菌種に1.25~20μg/ml, Sporothrix schenckii に8.41μg/ml, Trichosporon 属菌種に0.62~5μg/ml, および Fusarium solani に80μg/mlであつた. また黄色ブドウ球菌, 溶血連鎖球菌および嫌気性菌を含む細菌群に対しては一般的に抗菌活性は弱くMIC値が100μg/ml以上を示す菌種が大部分をしめた. KCZの in vitro 抗真菌活性に及ぼす培地組成, 培養時間, 接種菌量, 血清の添加, 培地pHの影響を検討した結果, 培地pHの影響が最も大きく, 培地pHを3から8に変動するに伴ないKCZの C. albicans に対する活性は約1,000倍増強された.
  • 感染より発症までの期間が明らかな一例
    滝内 石夫, 樋口 道生, 古賀 美保
    1982 年 23 巻 2 号 p. 181-183
    発行日: 1982/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    24歳, 主婦. 患者は痂皮や脱毛巣が認められた仔猫を拾い飼育を始めたが, 3日後に仔猫はどこかへ行つてしまつた. したがつて, 仔猫についての菌学的検索をおこない得なかつた. この飼育していた3日間, 患者は仔猫を襟巻きのように頚の上に置いて寝ていたという. 飼育を始めてから8日目に, 頚部を中心に鱗屑を附す環状紅斑が多発してきた. 病巣部の鱗屑等より M. canis を分離, 同定した. トリコフィチン反応は陰性であつた. M. canis が猫から人間へ感染した後,皮疹を発症させるまでの期間については1~2週間位といわれる.本症例は,その感染から発症までの期間が極めて明確であり,かくの如く密接に感染源に接触していると,早ければ5日間,遅くとも8日間で発症に至るものと思われた.
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