抄録
肺アルペルギロームの症例で, 基礎疾患および肺切除の既往があり外科的治療ができないため, 内科的に miconazole を経気管支空洞内注入を試み, 菌球が消失し, 内科的治療に成功したことを速報としてごく簡単に報告したが, 今回はその手技と経過について詳細に報告したい. 我々は, 以前にも amphotericin B, clotrimazole, flucytosine などの空洞内注入の治療経験がある. 今回, 48歳の男性で, 左肺下葉切除をしこおり, 糖尿病を合併しているため, 外科的治療の適応がない症例に miconazole を経気管支的に空洞内に注入した. この方法では注入量が少量で, しかも重篤な副作用を認めず, 比較的短期間で菌塊の喀出がみられ, 遂には菌球が消失した. 我々のかかる方法は, 肺アスペルギロームの内科的治療として有望であると考える. 本法は比較的容易に, かつ安全に施行できるが, 一回投与量および, 総投与量については尚検討が必要である. また本法に伴う副作用についてもほとんど報告がないので不明な部分もあり, 今後慎重に検討する必要がある.