クロモミコーシスおよび関連疾患の原因菌には, 分類や生態の面において多少の問題を残しているものがある. 次のようである.
(1) 寄生形態: クロモミコーシスの皮膚病変において,
F. pedrosoi と
P. dermatitidis は専ら sclerotic cells として現われるが,
P. verrucosa の場合は sclerotic cells のほか, それらからの菌糸発芽がしばしばみられる. 脳, その他の内臓病変においては,
F. pedrosoi は専ら菌糸形を示すが,
P. dermatitidis の場合は菌糸形のほか sclerotic cells もみられうる.
P. gougerotii の寄生形態は, 病変が皮下嚢腫または皮膚の肉芽腫の場合は菌糸形であるが, 皮膚の疣状病変の場合は胞子形 (sclerotic cellsに類似) でありうる. (2) 集落の形態:
P. dermatitidis の培養は普通の意味の2相性と異なる2相性を示す. すなわち, 普通の Sabouraud 培地・室温で2相であり得, 一つは sclerotic cells 類似の菌細胞のみから成り菌糸発育の全くみられない顆粒相, 他は平坦な集落で専ら培地内菌糸発育を示す菌糸相である. 顆粒相から菌糸相への変移は起こりうるが, 逆方向の変移はまだみられていない. この2相性は外国の教科書には記述のない, 強調すべき事項である.
P. gougerotiiの集落は表面に気中菌糸が密生して羊毛状を呈するが, 処々が湿性で毛が粗大にみえることがある. (3) 分生子形成:
P. dermatitidis の顆粒相においても稀に, 連鎖をなす菌細胞の小突起からの胞子形成がみられるうる. 本菌の菌糸相,
P. gougerotii, P. jeanselmei の3者の分生子形成は類似し, 分生子柄の先端または菌糸の小突起から分生子が次々に生れ出る. その際, 柄や突起の先端に環紋の存在が立証されうる.
抄録全体を表示