真菌と真菌症
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病原性黒色真菌のマウス中枢神経系への侵襲性について
西村 和子
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1984 年 25 巻 3 号 p. 211-218

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抄録

病原性黒色真菌, Fonsecaea pedrosoi, Cladosporium trichoides, Exophiala dermatitidis, E. jeanselmei および Phialophora verrucosa の neurotropism がヌードマウスおよびそのヘテロ接合同腹仔を用いて検討された. 前3菌種はマウス脳を強く侵したが, 後2菌種は侵さなかつた. F. pedrosoi 感染を受けた両マウス脳においては, 感染初期には菌糸発育に伴つて小膿瘍が形成されていた. 感染の進行と共にヌードマウスでは菌糸は発育し続け, 化膿性壊死性病巣が形成された. ヘテロマウスでは10日目頃より病変は肉芽腫性となり, 菌糸発育は抑制されていた. C. trichoides を接種されたヌードおよびヘテロマウスの脳においては, 感染初期には菌糸発育に伴つて小膿瘍が認められた. 病巣は速やかに拡大し, ヘテロマウスでは旺盛な菌糸発育を伴つた化膿性壊死性病変が, ヌードマウスでは細胞反応に乏しい, 大きな菌糸発育巣が認められ, 基部組織を変性壊死に陥れていた. E. dermatitidis 感染を受けた両マウス脳においては, 酵母様細胞を中心とした小肉芽腫性病変が多数認められた. ヘテロマウスでは菌接種40日後に病巣が消失したが, ヌードマウスでは持続的に小肉芽腫性病変が観察された. その病巣中の酵母様細胞の周囲にはアルシャンブルー陽性物質が産生されていた.

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