抄録
Aspergillus fumigatus 生菌感染マウスと Asp-hemolysin 投与マウス血清の生化学的分析を行い, 次のような結果が得られた. すなわち, Asp-hemolysin 投与後のマウスにおいて, 非タンパク性窒素, 血中尿素窒素, 血清グルタミン酸オギザロ酢酸トランスアミナーゼ, 血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ, 乳酸脱水素酵素の血清レベルの上昇が認められた. また, Aspergillus fumigatus 生菌感染マウスにおいても, 血清内レベル上昇までの時間的ずれはみられるものの, Asp-hemolysin 投与群とほぼ類似した上記血清成分の有意な変動が観察された. LDH アイソザイムパターンからは, 両投与群共に, 腎臓, 心臓, 肝臓等の組織障害が考えられ, この結果は前報の病理組織所見との一致をみた. 以上のように, 生菌および Asp-hemolysin 投与後のマウス血清の生化学的比較検討からも, 菌側因子としての Asp-hemolysinが, 実験的生菌感染時における発症・進展に関する可能性が示唆された.