抄録
尿中のD-アラビニトールについて, 対照と深在性カンジダ症の合併が疑われた時期の白血病患者について, 血清D-アラビニトール/クレアチニン比と比較した.尿中のD-アラビニトール濃度は血清中に比べて高く, D-アラビニトール脱水素酵素を加えてNADが還元される速度を分光光度計の340nmの吸収の増加で測定することにより算出できた.尿を37℃8時間放置した時, 尿中のCandidaや細菌の影響は殆どみられないが, 20時間放置では影響がみられたので, 本研究では早朝尿を滅菌フィルターで濾過後凍結保存して測定した.対照尿のD-アラビニトール/クレアチニン比の基準値は血清中とほぼ同様で, 高齢者の中にやや高値を示す割合が高かった.そして血清値とよく相関した.一方, 深在性カンジダ症が疑われた時期前後の尿中D-アラビニトール/クレアチニン比を調べると, 血清値に比べてその上昇が遅く, 上昇の程度も低いが, 血清値の下降時は尿中値が長期間高値となっていた.
以上の結果より, 身体内部のCandidaの増殖を早期に察知するには, 血清中D-アラビニトールを測定する方が優っているが, その後の推移には尿中D-アラビニトールもあわせて測定することが必要と考えられた.