抄録
Candida albicans の germ tube 形成の系を用い, 酵母形から菌糸形へ変換する過程での細胞壁構造と細胞質微細構造, 並びに細胞骨格の動態について観察した.
細胞壁マンナンの局在性に関しては, 酵母形および菌糸形ともに明かな差は認めらなかった. 酸-アルカリ不溶性グルカンは, 網目構造を示し, 菌糸形では酵母形に比べ明らかに発達の程度が弱い. また, budding cell では mother-bud neck でグルカン繊維がリング状に配向していた. キチンは顆粒状構造を示し, これは germ tube でより顕著に認められ, 移行部より先端にかけて一様に分布していた.
出芽初期の出芽部位には多数の細胞質小胞が観察された. 凍結置換法では, 細胞質小胞は電子密度の高い物質を含む球形の構造として示され, germ tube 先端に集積して観察された. また, germ tube は微細構造的には, 先端生長を示す糸状菌と同様に, 先端から基部にかけて構造の分化がみられた.
細胞質微小管は, 菌糸形細胞では酵母形に比べより顕著に見出され, そのいくつかは germ tube 先端にまで達しているのが観察された. 他方, アクチンは酵母形および菌糸形共に細胞生長領域に一致して観察され, 細胞壁合成との関係が示唆された.