25℃では酵母形での増殖をさせ, 37℃では酵母形から菌糸形への転換を起こさせる合成培地を用いて,
Candida albicans の細胞形態と呼吸との関係ならびに両形態の細胞の呼吸の性状を調べた. 細胞蛋白の増加は, 25℃では対数的であるのに対して, 37℃では直線的であったが, 呼吸活性, 各種阻害剤に対する感受性等には両形態細胞に基本的な差異は認められなかった. しかし, シアン耐性呼吸の発現は酵母形細胞の方が顕著であった. この結果は, 呼吸の抑制は酵母形から菌糸形への転換に必須ではないことを示唆している.
次に, ミトコンドリアを特異的に染色する螢光色素 2-(4-dimethylaminostyryl)-1-methylpyridinium iodide (DASPMI) を用いて, 25℃での出芽増殖時及び37℃での酵母形から菌糸形への転換時におけるミトコンドリアの挙動を追跡した. 対数増殖期の酵母形細胞は通常1個の分岐をもった巨大ミトコンドリアを含んでおり, その巨大形態は一連の出芽サイクルを通して保持され, 隔壁形成により母細胞と娘細胞に分断, 配分された. 酵母形細胞から発芽管が萌出し, 菌糸形に転換するに際しては, 巨大ミトコンドリアの一端が発芽管の中に伸長し管状に発達した. 伸長した発芽管に隔壁ができ菌糸形態になると, 細胞質に富み, 分岐した巨大ミトコンドリアを含んだ先端の菌糸細胞は, 液胞が発達してミトコンドリアが小さくなった菌糸細胞を後に残しながら伸長して行った. 先端細胞での密なミトコンドリアの存在は, この部分が菌糸の伸長部であり, 代謝的に最も活発であることと一致する. これらの結果を, 発芽管及び菌糸成長に関する Gow and Gooday (1985) のモデルを基に考察し, ミトコンドリアの挙動がこのモデルでよく説明されることを述べた.
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