真菌と真菌症
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鉄代謝からみた深在性真菌症の組織応答
阿部 章彦加藤 匡志稲葉 鋭
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1989 年 30 巻 4 号 p. 254-259

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抄録

鉄と真菌の相互作用について著者らが行ってきた実験結果をもとに深在性真菌症の組織応答の面から検討した.
1) 鉄過剰状態による易感染性: 鉄過剰状態後のICRマウスに Candida albicans を接種すると, 早期に腎膿瘍が形成され, 仮性菌糸が認められたが, 対照群ではその時点で膿瘍内に真菌要素はみられなかった. すなわち, 鉄過剰は真菌症の組織学的所見には本質的な差異をもたらさなかったが, 真菌要素の発育促進に大きな影響を与えていた. 白血病マウスを用いた実験でも同様の結果であった.
2) 血清鉄低下による感染抵抗性: Lipopolysaccharide あるいは muramyl dipeptide を前処置して血清鉄を低下させた後, アスペルギルスを接種すると, その発育速度の低下がみられ, 真菌病変の形成に時相のずれをきたした.
3) UIBC (不飽和鉄結合能) の低下による易感染性: 糖尿病性ケトアシドーシスによるUIBCの低下は, Rhizopus oryzae の発育を促進した.
4) トランスフェリン量低下による易感染性: D (+) galactosamine 肝障害は, トランスフェリン量を低下させ, カンジダの発育を促進した.
以上の鉄代謝の変化による深在性真菌症の組織応答は, それぞれの対照群と比べ, 本質的な差異はなかったが, 鉄代謝の変化は真菌の発育の速さと病変の広がりに影響を与えていた.

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© 日本医真菌学会
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