抄録
播種性真菌症における肺からの血行性伝播の機序を明らかにするため,薬物処理をしたマウスを用いて,Candida albicansを経気道的に接種して病理組織学的に検討した.ICR雌マウスを用い,prednisolone sodium(60mg/kg),cyclophosphamide(60mg/kg)およびcefazolin sodium(900mg/kg)を腹腔内に4日間投与して,末梢白血球数を4,000/mm3以下とした.C.albicans MCLS-2の2×106個の生菌を気管より肺内に接種した.対照動物では全身播種は起こらなかったが,薬物処理マウスでは接種2日より血行性伝播が観察された.肺では,径50μm以下の血管内に侵入した菌体は線維素血栓で包まれ,血行性伝播にいたらなかったが,径50μm以上の血管内に侵入した菌体は全身播種を生じた.真菌の血管内侵入は肺胞壁を直接破って行われた.以上の結果から,血行性伝播には或程度,防御能の低下,特に白血球の減少が必要であり,肺内のやや太い血管に菌が侵入すると血行性伝播が起こることが明らかになった.