日本医真菌学会雑誌
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手・体部白癬を合併したTrichophyton violaceumによるケルスス禿瘡の小児例
加藤 卓朗佐野 隆夫香川 三郎
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1990 年 31 巻 1 号 p. 43-49

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抄録
体部白癬(両耳介)と手白癬(右手掌)を伴うケルスス禿瘡の10歳男児例を報告した.病毛の直接鏡検で,毛内性大胞子菌性寄生を認め,耳介と右手掌の鱗屑中にも菌要素を認めた.すべての病巣より淡褐色湿性の集落を得たが,オートミール培地上で淡紅色の色素を産生し,サイアミン添加BHI培地を用いた巨大培養で,単純性で短い長楕円形の小分生子を多数認めたことより,Tricophyton violaceumと同定した.頭頂部の結節の病理組織学的所見は,毛包壁の破壊と毛包内外の膿瘍で,PAS染色では毛の中に胞子連鎖を多数認めた.グリセオフルビン2錠/日内服と抗真菌剤外用を行ったところ,手と耳は3週間で,頭は9週間で治癒した.しかし約1年後に両耳介に体部白癬が再発し,同じ菌が分離された.
以上よりオートミール培地はT.violaceumT.glabrumの鑑別培地として有用で,サイアミン添加BHI培地を用いた巨大培養は,分生子形成法として有用である.また治療中止後,再発するまでの無症状の1年間は,subclinicalな感染状態であったと考えられた.
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