抄録
呼吸器疾患患者について抗クリプトコックス抗体感作粒子によるラテックス凝集反応で肺クリプトコックス症の血清学的診断を試み,その有用性について検討した.1981年から1986年6月までの2,623例では49例(1.9%)の抗原陽性例が認められた.このうち病理組織学的に菌体を確認し肺クリプトコックス症と診断できたものは3例であった.49例のうちリウマトイド因子の干渉があるため陽性と判定した20例を含めて偽陽性例は46例で,他に偽陰性例が3例あった.一方,1986年7月からの1,231例ではリウマトイド因子をプロテアーゼ処理で除いた新しいラテックス凝集反応を用いた.その結果,抗原陽性例は8例(0.6%)であったが全例が肺クリプトコックス症と診断された.リウマトイド因子の干渉や偽陽性例は一例もなかったが,偽陰性例が2例みられた.後者では感度と特異性が共に向上し前者よりも有用性が高かった.血清抗体価の測定は861例について,菌体抗原を用いたスライド凝集反応を行ない,抗体陽性例36例(4.2%)を見出した.このうち本症を確認したのは3例で,それ以外の症例は不顕性感染を過去に受けたものと考えた.