抄録
Paracoccidioides brasiliensisは南米のパラコクシジオイデス症の原因菌で,温度依存性の二形性菌であり,室温では菌糸形,37℃では酵母形となる.また菌糸形から酵母形に変換する過程で厚膜胞子を形成する.本菌の厚膜胞子形成に及ぼす温度,栄養条件は一定の見解が得られていない.そこで厚膜胞子の形成条件をParacoccidioides brasiliensis Pb-18株を用いて調べた.シャーレで寒天培地と混釈培養をしたところ,1.培地は富栄養よりも貧栄養の方が厚膜胞子形成に都合がよかったが,無栄養(water agar)では厚膜胞子形成は起こらなかった.2.25℃以上,30℃までは,温度上昇に比例して厚膜胞子形成が進んだ.3.菌濃度が106units/mlのときに厚膜胞子形成は最もよかった.4.寒天濃度は1.0ないしは2.0%で,最も厚膜胞子形成がみられた.本菌の厚膜胞子形成は,単に温度による影響だけでなく,培地,菌量,寒天濃度等の要因が複雑に関与していた.