日本医真菌学会雑誌
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病巣のない頭髪からのMicrosporum canisの検出
加藤 卓朗佐野 隆夫香川 三郎
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1990 年 31 巻 4 号 p. 369-375

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抄録
Microsporum canis感染症患者ならびに家族の病巣のない頭髪より,ヘアーブラシ法を用いてM.canisの検出を行った.対象はM.canisによる体部白癬患者16例と本菌感染症患者の家族34例で,成人40例,小児10例であった.また家庭内感染源として,患者家庭内の頭部白癬患者8例と飼いネコ21匹も検索した.その結果は次の通りである.(1)初診時,病巣のない頭髪の50例中32例(64%)より本菌を検出した.(2)頭髪からの菌検出率と集落数は家庭内の感染源が,複数のネコ,1匹のネコ,頭部白癬患者の順に高く,体部白癬患者のみの家庭では菌は全く検出されなかった.(3)感染源の治療を行って,経過を観察したところ,初診時菌陽性でも,成人においては,1例も頭部の発症はなかったが,小児では1例(3才男児)に頭部白癬が発症した.(4)洗髪の前後に培養を行ったところ,洗髪後でも菌は陽性であったが,集落数は減少した.(5)頭髪からの菌検出率と集落数は,感染源のヘアーブラシ法による培養の集落数に相関していた.以上より,M.canis感染症患者のいる家庭の病巣のない頭髪からM.canisが検出されても,多くは菌は単に頭髪に付着しているにすぎないと推論された.また病巣のない頭髪より菌が検出されても,感染源の治療を行えば,少なくとも成人では,頭部に関して治療の必要はないと考えられた.しかしながら,小児では洗髪の励行や予防的な治療も必要なことがあることも示唆された.
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