日本医真菌学会雑誌
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角膜真菌症
症例報告と原因真菌の薬剤感受性
桐生 博愛
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1991 年 32 巻 2 号 p. 107-117

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抄録
産業医科大学皮膚科で確実に角膜真菌症と診断された 2 症例を報告し, ついで 1988 年までの本邦報告例について若干の統計的観察を行った.症例 1 は, 右眼の眼痛と視力障害を主訴とした 35 歳男性で, 原因菌は Fusarium solani であり, amphotericin B の点眼によって治癒した.症例 2 は左眼の眼痛と視力障害を主訴とした 65 歳女性で, 原因菌は Alternaria alternata であり, ketoconazole の内服によって治癒した.
本邦における角膜真菌症の症例は, 1988 年までに 250 例を越える報告がある.そのうち直接鏡検で病巣内に菌要素が証明され, さらに培養も陽性で原因菌種の同定までなされている症例は全症例数の 34% であった。我々はこれらの症例を確実例として統計的な観察を行った.その結果症例数は年々増加の傾向を示し, 年齢的には若年者に少なく高齢者に多い傾向を示した.分離された原因菌種は20種以上にのぼるが, なかでも Fusarium が最も多く, 全体の 26% を占めた.
次に我々の分離した F.solani 及び A. altemata に対する抗真菌剤の最少発育阻止濃度 (MIC と略) を測定した.その結果 pimaricin または amphotericin B の点眼はいずれの菌にも有効であるが, miconazole と ketoconazole は Fusarium に対して効果が弱いと思われた.つぎに MIC 測定における培地 pH と培養温度の影響について検討し, これらを通常より生体に近い条件に設定した場合, amphotericin B と ketoconazole の MIC 値がかなり改善される結果を得た.よって, これらの薬剤は実際の治療において MIC 値から予測されるより強い抗菌作用を示している可能性が示唆された.
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