1992 年 33 巻 4 号 p. 453-460
種々の臨床材料から分離される病原真菌,特に糸状菌(二形性菌も含めて)の迅速同定の要件が検討された.
伝票などに記されている患者の基本的データ,基礎疾患の有無,海外渡航歴,検体の種類と採取部位などから分離され得る糸状菌を想定しておく.同定作業には,検体の培養と培養された菌群から1ないし数種の原因菌とおぼしき糸状菌の分離,次いで純培養菌の諸性状,特に形態の検査の2ステップがある.培養に時間のかかる糸状菌の場合はこの2ステップをオーバーラップさせることが同定の迅速化につながる.培地はポテトデキストロース寒天に抗細菌剤を加えて用い,25~30℃で良好な好気条件を保って培養する.生じてきた原因菌と思われる集落の発育速度,色,菌苔の状態,集落の顕微鏡による直接観察,掻き取り標本などによって一次同定を行なう.