抄録
癜風とマラセチア毛包炎について報告した.癜風は若年者に多いとされているが,統計学的に検討すると,時代とともに30歳未満の割合は減少しており,現在では青年から中年に好発するといえる.開発臨床試験において癜風に対する抗真菌剤の有効性の評価は,臨床症状,および直接鏡検により判定されている.最近の外用抗真菌剤の成績は,臨床的な改善以上および菌陰性化率は極めて高率である.そこで評価判定を培養検査で行うと,薬剤や基剤により,差を生じやすく,有効性の比較には適していた.さらに治療終了時の培養検査の成績は早期の再発に相関した.一方,癜風の動物モデルはない.そこで本菌が皮膚の常在菌であることを利用して抗菌試験を試みた.方法は癜風菌の培養が陽性の被験者の上背部に1日1回抗真菌剤と対照薬を5日間連日単純塗布し,6日目から陽性になるまで培養を行った.その結果,抗真菌剤の培養陰性化率は白色ワセリンと差があった.マラセチア毛包炎は本邦でもすでに多数の報告例がある.本症の診断に重要な菌要素の確認は毛包内容の直接鏡検,培養検査,および剥切検体,毛包内容,生検組織のPAS,グロコット染色などによって行われている.筆者の検討ではステロイド座瘡や尋常性座瘡の毛包内容にも菌要素を認める.したがって,マラセチア毛包炎の診断基準を確立する必要がある.