日本重症心身障害学会誌
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O-1-A-18 給食職員を感染源とするKlebsiella pneumoniaeによる嘔吐下痢症の院内小流行
澤田 晃子月野 隆一
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2012 年 37 巻 2 号 p. 263

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抄録
目的 Klebsiella pneumoniaeは一般に腸内、気道から高率に分離され、ときに日和見感染を引き起こすとされているが強い病原菌としては扱われていない。今回一時期(5時間半以内)に全療育棟で10名の利用者が嘔吐下痢症を発症した(第一療育棟 43名中1名、第二療育棟 44名中5名、第三療育棟 44名中4名)。強毒菌による食中毒と考えて病原体および感染源の同定を試みた。 方法 調査期間中に発症した利用者10名の便の細菌培養、および5名にはノロウイルス迅速診断キットを実施した。同時期に給食職員19名の便について赤痢菌、サルモネラ菌、O-157、Klebsiella pneumoniaeを検査した。 給食職員4名と利用者10名からKlebsiella pneumoniaeが検出された。給食職員4名、利用者3名の分離株を材料に制限酵素Spe1を用いて遺伝子解析(パルスフィールド電気泳動解析)を実施した。 結果 利用者10名全員、給食職員4名からKlebsiella pneumoniaeが検出された。給食職員の4名と利用者3名の便の遺伝子解析は1名の給食職員と利用者3名全員のパターンが一致した。ノロウイルスは検出されなかった。 結論 発症者10名全員からKlebsiella pneumoniaeが検出され、その遺伝子電気泳動パターンが給食職員1名と同一であったことより、今回の院内感染源は給食職員由来と同定した。弱毒菌もしくは常在菌として扱われているKlebsiella pneumoniaeも食中毒を発症しうることが判明し、今後の院内感染対策に留意したい。
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© 2012 日本重症心身障害学会
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