日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 1882-0476
Print ISSN : 0916-4804
ISSN-L : 0916-4804
抗真菌薬の耐性機構
山口 英世
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 40 巻 4 号 p. 199-208

詳細
抄録

深在性真菌症の治療薬として使用されている主要3クラスの抗真菌薬であるamphotericin B (AMPH), flucytosine (5-FC)およびfluconazole(FLCZ)その他のアゾール系薬剤の分子レベルおよび細胞レベルでの耐性機構に関する現時点での知見を概説する.AMPHおよび5-FCに対する耐性菌に関する報告は少ないが,いずれの薬剤についても幾つかの耐性機構がこれまで知られている.CandidaのAMPH耐性株は,感受性株にくらべてエルゴステロール含量が著しく低下しており,ステロール合成系の異常が示唆される.5-FCについては様々な耐性機構の存在が実験的に得られたSaccharomyces cerevisiaeの耐性変異株の生化学的解析から見出されているが,臨床的に最も大きな問題となるC.albicansの5-FC耐性分離株については,UMP-ピロホスホリラーゼの欠損または活性低下による耐性獲得が最も高頻度にみられる.近年アゾール系抗真菌薬とくにFLCZに耐性化したC.albicansの出現が益々大きな問題となっている.これまでなされた広汎な生化学的ならびに分子生物学的研究からは,FLCZその他のアゾール系薬剤に対する耐性獲得機構は多様であり,ステロール合成,標的分子(P45014DM),薬剤移入および薬剤排出に変化が見出されている.そのなかで臨床的に最も重要な耐性機構は,細胞内の標的分子への薬剤の到達が減少するものであり,これは多剤耐性排出ポンプの活性化または標的分子の過剰産生によることが推定される.しかしこれらのいずれとも異なるアゾール系薬剤耐性機構が存在する可能性があり,今後の検討が待たれる.

著者関連情報
© 日本医真菌学会
次の記事
feedback
Top