日本医真菌学会雑誌
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好中球減少患者における診療指針
吉田 稔
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2004 年 45 巻 4 号 p. 209-215

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抄録

深在性真菌症は白血病などの好中球減少患者や造血幹細胞移植患者に合併する重篤な感染症である.特にカンジダ症(敗血症,慢性播種性カンジダ症,肺炎など)と侵襲性肺アスペルギルス症が多く,近年は後者の増加傾向が指摘されている.我が国の深在性真菌症の診療・治療ガイドラインでは本症を3つのカテゴリーに分類した.確定診断例(proven fungal infection)は感染部位の組織学的検査や培養で真菌が証明されるか,真菌血症の場合である.臨床診断例(clinically documented fungal infection)は例えば侵襲性肺アスペルギルス症で,胸部CTのhalo signなどの典型的な画像所見と,血清または遺伝子診断が陽性の場合である.血清診断ではアスペルギルスガラクトマンナン抗原やβグルカンなどが利用される.真菌症疑い例(possible fungal infection)は画像診断か血清または遺伝子診断のいずれかが陽性の場合となる.造血幹細胞移植などのハイリスク患者では経口抗真菌剤による予防が,疑い例ではフルコナゾールまたはアムホテリシンBによる経験的治療(empiric therapy)が推奨される.臨床診断例や確定診断例では標的治療(targeted therapy)が行われ,カンジダ症ではフルコナゾールの400mg/日あるいはアムホテリシンBの0.5~0.7mg/kg/日が,アスペルギルス症ではアムホテリシンBの1.0~1.5mg/kg/日が必要である.近年我が国で開発されたミカファンギンはカンジダとアスペルギルスいずれにも抗菌力があり,経験的治療や標的治療に有用と考えられる.

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