2004 年 45 巻 4 号 p. 233-237
歯科診療上で,近年増加している病態で慢性に舌痛を訴える症例がある.一方,訴えは同様であるが,日本心身医学会で舌痛症といわれる心身症領域の病態がある.これは,心身症領域の専門の医療者が扱わなければならない心理社会的な因子が密接に関与するものであり,歯科では簡易精神療法や自律訓練法などが行われたが,いずれも難治であり,患者ばかりでなく治療者をも悩ませていた.本症の診断過程での除外診断中に口腔の表在性カンジダ症を治療することにより,ほとんどの痛みを解消できることがわかった.また,症例中にはわずかではあるが,再発する例もあり,これらの投与前,再発時の真菌について抗真菌薬のMIC,アピCオクサノグラムを用いての生化学的性状検査,およびPFGEでの遺伝子学的解析を行い,初診時および再発時の検出真菌は同一であることがわかった.
それらの結果から,舌痛症の除外診断には真菌感染症の診査および治療が重要な鍵を握っていることがわかった.