日本医真菌学会雑誌
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皮膚糸状菌の角質内侵入と予防に関する研究
森下 宣明二宮 淳也清 佳浩滝内 石夫
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2004 年 45 巻 4 号 p. 247-252

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抄録

健常人の踵部の角質片に,数種の皮膚糸状菌を塗布し,角質内への菌の侵入速度や侵入後の洗浄による菌の除去について検討した.
足白癬を想定した実験系では,角質表面に菌を塗布した後,以下の2系列の実験系をたてた.(1) 屋内で靴下を履いている環境として,湿度90%を8時間,湿度100%を16時間,(2) 屋内で裸足でいる環境として,湿度80%を8時間,湿度100%を16時間培養し,経日的に取り出し,石鹸水を浸した綿棒による洗浄前後について,それぞれPAS染色,走査電顕で観察した.(1)では1日後に洗浄しても菌を除去することはできなかったが,(2)では2日後でも菌が除去されていた.靴を脱いでいるときには足の湿度を低く保つこと,連日足底・趾間の洗浄をおこなうことにより,角質内に菌が侵入し始めても容易に除去できると思われた.
また,体部白癬を想定した実験系では,角質切断面に菌を塗布し,湿度80%で培養後,経日的に取り出し,PAS染色後観察した.Trichophyton tonsuransは,0.5日で角質への侵入が始まり,他の菌種の皮膚糸状菌よりも角質内への侵入速度が速く,最近の感染拡大の要因の1つであると思われた.

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