超音波医学
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症例報告
凝血塊内に血流を認めた帝王切開創部妊娠流産症例
輿石 太郎馬場 一憲木下 二宣斎藤 麻紀大久保 貴司斉藤 正博林 直樹竹田 省
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2006 年 33 巻 5 号 p. 583-588

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抄録

帝王切開創部妊娠は子宮破裂, 大量出血の原因となり, 早期の診断, 治療が重要であるが, 未だ治療法は確立されていない. 当科では妊娠初期に診断し, メソトレキセート (MTX) 投与や子宮動脈塞栓術 (uterine artery embolism : UAE) を併用して子宮内容除去術 (dilatation and curettage : D&C) で妊卵除去を行う方法を用い, 良い治療成績を上げている. しかし, 今回, D&Cで治療を完結できずに開腹手術を行った1症例を経験した. 症例は31歳2経妊1経産. 前置胎盤による帝王切開術の既往がある. 前医で妊娠8週稽留流産の診断で流産処置を試みるも出血多量のため処置中止となり, 外来フォローとなっていた. 約6週間後, 出血多量によるプレショック状態で当科に緊急入院となり, 帝王切開創部妊娠と診断された. 創部内は凝血塊と思われる腫瘤で占められ, そこに流入する動脈性の血流も確認された. MTXの経静脈投与とUAEを施行した後にD&Cを施行したが, 子宮筋層の菲薄化のために治療を完結できなかった. その後, 腫瘤は縮小し動脈性の血流も消失したが, 出血が続くために開腹手術による腫瘤摘出術を行った. 術後は経過順調であった. 帝王切開創部妊娠における管理, 治療指針について, 当院での治療経験に文献的考察を加え再検討するとともに, この症例における超音波ドプラ法の所見について検討した.

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© 2006 一般社団法人 日本超音波医学会
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