超音波医学
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原著
ラットにおける拡張能(E/A)評価の妥当性
石蔵 文信浅沼 俊彦山本 一博大森 浩二高野 真澄別府 慎太郎
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2008 年 35 巻 1 号 p. 13-18

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抄録
背景および目的:拡張能指標である僧帽弁左室流入波形E/Aは有用であるが,心拍数が高い小動物ではE波とA波が重畳するためE/A計測が困難である.今回の研究の目的は麻酔薬による心拍数の低下時におけるE,A波の分離,左室収縮機能の変化を検討することである.方法:雄性SDラットを対象とし,GE社製ViVid7,10s型プローブ(11.5MHz,234FPS)を用いた.ペントバルビタール麻酔後および,その後心拍数低下作用のある麻酔薬キシラジン1回当たり0.005ml/100gを,複数回腹腔投与して心エコー測定を行った.左室流入波形はE波とA波の分離の度合いに応じて完全重複群,重複群,分離群,完全分離群の4群に分類した.収縮能指標には左室面積変化率(FAC)と1回拍出量(SV)を用いた.結果:ペントバルビタール麻酔のみでは完全分離,分離群は20%であったが,キシラジンで心拍数が下がるとE波とA波が分離し,350/分以下では78%が計測可能であり,300/分以下では全て計測可能であった.心拍数の低下前後で,E波高,A波高,E/Aに著明な変化は認めなかったが,FACは軽度低下(p<0.05)し,SVは軽度増加した.結語:通常のペントバルビタール麻酔下では心拍数の個体差が大きく,80%でE/A計測が出来ない.心拍数を350/分から250/分まで低下させると78%で計測可能であったが,収縮能指標に若干の変化があった.収縮能指標変化を無視出来ないような微細な拡張能を検討する場合には,各例で心拍数を極力揃えるのが望ましい.
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© 2008 一般社団法人 日本超音波医学会
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