超音波医学
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症例報告
超音波検査が経過観察に有用であった孤立性上腸間膜動脈解離の1例
石村 美由紀林 理絵下司 洋臣小川 加奈子井内 和幸
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2008 年 35 巻 2 号 p. 191-195

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抄録
症例は,64歳の女性.高血圧症で加療中,2005年10月14日突然,腹痛が出現し,内服薬を投与されるが症状が持続するため,一週間後,当院を受診した.腹部造影CTにて,上腸間膜動脈起始部から7‐8cmに渡り偽腔の血栓化と真腔の高度狭窄を伴う上腸間膜動脈解離を認め,小腸の虚血も疑われた.超音波検査でも,腹部造影CTと同様の所見であった.血流が保たれていることと症状が軽快しており,絶食など保存的治療にて様子をみた.第8病日での超音波検査では当初認めなかった上腸間膜動脈からの分枝血管を認め,第13病日では描出される分枝血管数はさらに増加した.自覚症状の消失や腹部造影CTでの小腸の虚血性変化も改善し,超音波検査での変化に一致する所見と考えられた.約3週間後には腹部造影CT上,偽腔の縮小と真腔の拡大を認め,約4ヵ月後の超音波検査では偽腔は確認されなかった.本例は腹部造影CT検査で経過を見る方法もあるが,被爆の問題と上腸間膜動脈本幹や分枝の血流を動的に把握出来る点で超音波検査が有用であった1例と考えられた.
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© 2008 一般社団法人 日本超音波医学会
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