抄録
胎便性腹膜炎は新生児外科疾患としては稀なものではなく,数多くの出生前診断例が報告されている.しかし,病勢の最盛期に偶然発見された例が大部分であり,発症前後の所見については充分な知見が得られているとは言えない.今回,スクリーニング検査で認めた腸管拡張像とそれに隣接した高エコー領域の存在から経過観察をしていた児において,発症直後と考えられる時点から分娩に至るまで11週間にわたって観察し得た胎便性腹膜炎の1例を経験したので,その画像所見の変化を中心に報告する.症例は30歳の経産婦であり,妊娠28週時点で腸管拡張と高エコー領域を認めた.2週間後の再検では有意な変化を認めなかったが,32週には嚢胞性変化の消失と胎児腹水の出現を認め,胎便性腹膜炎と診断した.約4時間後に実施した搬送先における所見では,急激な腹水の増加が見られた.腸管は一塊となった高エコー像として認識されたが,拡張像は消失していた.妊娠35週には,胎児腹水はほぼ消失したが,腸管の拡張像が著明となった.2日間にわたる羊水穿刺により2,500 mlの羊水除去を行ったが,胎児心拍数図には異常を認めないままに経過した.妊娠39週5日に分娩誘発を行い,胎児心拍数図に異常を認めることなく進行,3,081 gの女児を娩出した.