抄録
2006年に東大病院では,これまで検査部で施行していた心臓・血管超音波検査に加えて,新たに腹部,泌尿器,甲状腺超音波検査を検査部に中央化,同時にオンライン超音波検査レポートシステムとして,東芝メディカルシステムズ社製“EchoAgent”を導入し,完全電子カルテ化に向けて運用を開始した.これにより主治医による検査依頼から,検査部での検査実施・データ保存・レポート作成・レポート配信,主治医による結果閲覧までの一連の動作全てがオンライン化され,院内どこからでもレポートはもちろん,動画を含む全ての画像が閲覧可能となった.また,本システムにより検査結果集計や症例検索などが容易となり,症例検討や臨床研究に活用している.【有用性】1) 検査業務の合理化により,検査件数が年々着実に増加した.2) 超音波レポートおよび画像データの検索と閲覧が容易になり,診療時の症例検討が円滑かつ容易になった.3) ビデオおよび紙データを廃止できた.4) 超音波検査データの解析と統計処理が円滑かつ容易になり臨床研究が推進されたことが好ましい効果である.【問題点】導入当初は1) 処理速度の遅さ,2) 検索・統計機能がない,3) 動画が電子カルテで閲覧できないことが問題点であったが,現在までに2) 3)は解決された.1) 処理速度の遅さは,当初より改善されたものの,依然として大きな問題である.さらに,4) システム更新やシステム維持に要するコストが今後の大きな課題である.