超音波医学
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特集「超音波を用いた腎・泌尿器科領域の各臓器血流測定とその意義」
膀胱血流と下部尿路機能
和田 直樹柿崎 秀宏
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2014 年 41 巻 6 号 p. 819-825

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抄録

最近,ドプラ超音波法を用いた臨床研究により,下部尿路閉塞(bladder outlet obstruction: BOO)によって引き起こされる膀胱虚血が膀胱機能や下部尿路症状(lower urinary tract symptoms: LUTS)に与える影響について報告されつつある.Belenkyらは,BOOでは内腸骨動脈領域の血管抵抗(resistive index: RI)が高値であることを報告した.また,前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia: BPH)に対するα1遮断薬や経尿道的前立腺切除術(transurethral resection of the prostate: TURP)によって膀胱RIが改善し,さらにTURP後の排尿筋過活動の残存群においてRIが高値であることが報告されている.造影超音波検査を用いて行った我々の臨床研究では,(1)膀胱RIが前立腺腫大やBOOと相関すること,(2)TURPや5α還元酵素阻害薬投与によって膀胱RIは改善するが,これらの治療後の過活動膀胱の残存群では膀胱RIの改善が乏しいこと,(3)これらの治療後の膀胱RIの改善が乏しい群ではBOOの改善が乏しく,高血圧などの動脈硬化のリスクとなる全身疾患の罹患率が高いこと,が示されている.超音波技術の進歩に伴い簡便かつ正確な膀胱虚血の測定が可能になれば,膀胱虚血がLUTSに与える長期的な影響や,薬物治療もしくは外科的治療介入による膀胱虚血と膀胱機能障害の可逆性について解明されることが期待される.

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© 2014 一般社団法人 日本超音波医学会
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