超音波医学
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症例報告
2 cm以下の下咽頭癌2症例の超音波像
森本 由紀子平井 都始子伊藤 高広丸上 永晃山下 奈美子豊國 美鈴杉井 公美齊藤 弥穂大石 元
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2015 年 42 巻 3 号 p. 359-364

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抄録

超音波検査で観察できた2 cm以下の下咽頭癌2例を経験した.正常下咽頭超音波像と経験症例の超音波像について報告する.超音波では頸部正中やや外側の横断走査,ほぼ頸動脈分岐部レベルで,甲状軟骨後方に喉頭が描出され,隣接する喉頭蓋ヒダを隔てて,内腔に空気を有する梨状陥凹の前外側壁が観察できる.症例1,症例2ともに70歳代男性,内視鏡検査で左梨状陥凹に2 cm以下の腫瘍を指摘され,頸部リンパ節転移検索のため超音波検査を施行した.いずれの病変も超音波で左梨状陥凹内腔を占める低エコー腫瘤として描出され,カラードプラ法では喉頭蓋ヒダから腫瘤内部に流入する豊富なカラー表示が認められた.下咽頭癌は初発症状に乏しく,リンパ節転移を契機に進行癌で発見されることが多く,発生部位は梨状陥凹が60‐70%と最も多い.今回経験した2症例は梨状陥凹の2 cm以下の病変であったが超音波検査で明瞭に描出可能であった.頸部超音波検査の際に,特に高齢男性,アルコール多飲や喫煙歴を持つハイリスクの症例には,梨状陥凹の観察を心掛けることが,下咽頭癌の早期発見につながる可能性がある.

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© 2015 一般社団法人 日本超音波医学会
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