2015 年 42 巻 5 号 p. 637-645
症例は40歳,女性.皮膚の紅斑を主訴に皮膚科を受診し,鑑別として皮膚筋炎が考えられ,悪性疾患の精査目的に施行した腹部造影CT検査にて,肝S4/8に動脈相で辺縁部から濃染し,平衡相で軽度wash outされる径32 mmの腫瘤を認めた.腹部超音波検査Bモードでは,腫瘤のほとんどは境界明瞭な高エコーを呈し,内部の一部に嚢胞状の低エコー域を認めた.腹部造影超音波検査では,腫瘍は14秒後から染影されはじめ,38秒後に全体が均一に濃染された.門脈相では均一で肝実質とほぼ等エコーであった.嚢胞状の部位は染影しなかった.後血管相のadvanced dynamic flowで明瞭なdefectを呈した.肝腫瘍生検の病理診断では,肝原発神経内分泌腫瘍(primary hepatic neuroendocrine tumor: PHNET)が考えられたため,経皮経肝的門脈塞栓術を施行後に肝右葉3区域と尾状葉切除術を施行した.肝腫瘍は免疫組織学的に,chromogranin Aとsynaptophysinが陽性で,MIB-I indexは1.4%であった.肝外に原発巣を認めなかったことから,肝原発神経内分泌腫瘍 Grade 1と診断した.PHNETは稀な疾患であり,造影超音波検査で評価した報告例は少なく,文献的考察を踏まえて報告する.