2016 年 43 巻 1 号 p. 91-101
目的:超音波診断装置のプローブ先端には,シリコーンラバーを主成分とする音響レンズが使用されている.本研究では,音響レンズに新しいデバイスであるフォノニック結晶構造を用いることを考えた.今回提案する音響レンズは,空気中での使用を考慮してシリコーンラバーとステンレス棒で構成されている.本研究ではフォノニック結晶構造の平面音響レンズの特性の把握を目的とする.対象と方法:平面音響レンズの基礎特性として,従来の間隙媒質を水とした平面音響レンズと,間隙媒質をシリコーンラバーとした平面音響レンズに関して,数値解析手法である2次元弾性時間領域差分法によって集束音場を求めた.さらにレンズの基本性能として焦点距離,ビーム幅等の集束特性と周波数特性を求め比較した.結果と考察:集束音場を解析した結果,シリコーンラバーとステンレス棒で構成され平面音響レンズは,周波数2.5 MHzから3.2 MHzで集束することが分かった.間隙媒質を水とした場合に比べて集束する周波数範囲が低周波側にシフトした.これはシリコーンラバーの音速が水よりも遅いため,結晶格子間の限界基本周波数が低くなったことが原因である.結論:空気中での使用を考慮したシリコーンラバーとステンレス棒で構成されたフォノニック結晶構造による平面音響レンズの特徴を明らかにした.今後は3次元音場の精密な解析を行う予定である.