2017 年 44 巻 1 号 p. 49-54
症例は56歳の女性,主訴は胸部違和感.2週間前より咳嗽が出現し,胸部違和感と動悸を自覚したため当院を受診,精査加療目的に入院となった.来院時,脈圧の開大とSpO2の低下を認め,Levine III/VIの拡張期逆流性雑音を聴取した.胸部X線では,両側に肺うっ血,胸水貯留を認めた.心エコー図検査にて大動脈二尖弁(BAV)と重度の大動脈弁閉鎖不全症(AR)を認め,さらに弁尖に付着する索状構造物が見られたため,感染性心内膜炎(IE)を疑ったが,発熱はなく血液培養も陰性であった.重症ARによるうっ血性心不全で手術適応と判断し,他院にて大動脈弁置換術を施行した.術中所見ではrapheと連続する索状構造物(raphal cord)が断裂していた.急性ARの主な原因は,IEと急性大動脈解離であるが,今回,我々はraphal cordの断裂による急性ARを経験し,その診断に経胸壁および経食道心エコー検査が有用であったので報告する.