超音波医学
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原著
心内腔血流の速度ベクトルイメージングのための二次元相関関数の時間平均化
高橋 広樹長谷川 英之金井 浩
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2017 年 44 巻 3 号 p. 275-285

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抄録

目的:心内腔血流の超音波イメージングはヒトの心臓のポンプ機能を評価するのに非常に有用なツールである.スペックルトラッキング法は血流速度ベクトルの推定を可能にする.しかし,微小な血球からのエコーの信号対雑音比が低いため,血流速度ベクトルを安定的に推定することは難しい.本研究では,血流速度ベクトルの推定精度向上のために,2次元相関関数の時間平均化を行うスペックルトラッキング法を用いた.方法:拡散ビーム送波を用いた高フレームレート超音波断層法によって収集されるエコーデータを利用することで,複数の2次元相関関数を非常に短い時間幅で平均化することができる.擬似血液(平均流速0.2 m/s,トランスデューサ表面からの流れ角56°)を使った定常流実験を行い,6,024 Hzのフレームレートで2次元相関関数の平均化の効果を調べた.結果:まず初めに,血流速度ベクトルの安定的な推定に必要な平均化時間を検討するために,定常流測定にて,2次元相関関数のさまざまな平均化時間幅に対して速度ベクトル推定精度を評価した.8フレームを超える平均化時間幅を用いることで,ベクトル推定の方向推定誤差は従来のスペックルトラッキング法のほぼ半分に低減できることが分かった.次に,平均化時間幅を2 ms に相当する12フレームに設定し,より速い速度の定常流に対する計測を行った.速度0.2 m/sのエコーデータのフレーム間隔を変えることで,0.4 m/sおよび0.6 m/sの流速の定常流計測を模擬した.平均化時間幅はわずか2 msであったが,平均血流速度0.2 m/s,0.4 m/s,0.6 m/sにおける方向推定誤差は著しく減少した.健常者の心臓を対象としたin vivo実験では,高画質なBモード画像を生成するために,さまざまな偏向角の拡散波を送信する送信シーケンスを内挿した.実験の結果,左心室腔の血流速度ベクトルが駆出期および拡張初期における心内腔を流入および流出する血流を示した.さらに,推定された血流方向は拡張期における心内腔での渦流を可視化した.結論:提案する手法を用いることで,造影剤を使用せずに,速度ベクトルによる心内腔血流動態の可視化を実現する可能性が示された.

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© 2017 公益社団法人 日本超音波医学会
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