超音波医学
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症例報告
術中超音波検査が有用であった門脈大循環シャントを有する外傷性脾破裂の1例
山中 雅也杉本 博行
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2019 年 46 巻 2 号 p. 185-190

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抄録
門脈大循環シャントによる脳症はしばしば見逃されることがあり,高齢者においては認知機能の低下として処理されることがある.今回,術中超音波検査所見を指標とし脾摘術と同時に門脈大循環シャント閉鎖術を施行した外傷性脾破裂症例を経験したので報告する.症例は84歳女性.近医入院中に転倒し左肋骨骨折を生じた.その後退院となったが受傷後11日目に,意識消失のため当院救急外来に搬送された.遅発性脾破裂および腹腔内出血と診断し,緊急脾摘出術を施行した.脾摘後,術中超音波検査で門脈左枝を観察すると門脈逆流を認めた.脾腎シャントが著明に拡張しており,シャント血管を遮断したところ順行性の門脈血流となったため,シャント血管の結紮を行った.今回,緊急症例であり十分な術前検査を行う余裕はなく,術中にシャント閉鎖の適応を判断する必要があったが,術中超音波検査を判断材料とし,シャント閉鎖術を施行した.術後も門脈血流は順行性を維持し意識状態も速やかに改善しており,緊急での門脈大循環シャント閉鎖術は有効であった.術中超音波検査は,簡便にリアルタイムでの血流動態のモニタリングが可能であり,緊急門脈大循環シャント閉鎖術の適応の判断に有用であると示唆された.
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© 2019 公益社団法人 日本超音波医学会
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