超音波医学
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症例報告
発症初期にCarotidynia様の像を呈した高安動脈炎の1例
細見 恵岩崎 昭宏松本 尚子米澤 宜洋影山 敦子足立 誠己奥 成聡濵口 浩敏
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2019 年 46 巻 6 号 p. 559-564

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抄録

発症初期から79週にわたって超音波検査で経過観察し得た高安動脈炎の症例を経験した.症例は26歳女性.発熱と左頸部の圧痛を主訴に受診.頸部超音波検査を施行したところ,左総頸動脈から左内頸動脈起始部にかけて外膜側の不明瞭な壁肥厚像を認めた.MRI検査では同部位の血管外膜および周囲組織にT2高信号域が見られ,炎症所見が疑われた.また,MRA検査では血管内腔の狭窄や拡張病変を認めなかった.以上の画像所見からcarotidynia(頸動脈痛)を疑い,超音波検査にて経過観察となった.23週後には左内頸動脈の壁肥厚に改善傾向が見られた.30週後には左総頸動脈血管内膜面に壁不整像が見られるようになり,55 週後には左総頸動脈起始部に壁肥厚を認めたことから高安動脈炎を疑い,プレドニゾロン30 mg/日にて内服加療を開始した.57週後のMRI検査にて,左鎖骨下動脈にも辺縁平滑な狭窄像を認め,最終的に本症例は高安動脈炎であると診断した. 高安動脈炎は症状をきたした際には壁肥厚が進行し,頸動脈においてはいわゆるマカロニサインとよばれる全周性の壁肥厚所見を呈している場合が多い.初期画像を提示した報告例は非常に少なく,超音波画像で経時的変化を追った報告例は認めない.我々は発症初期に carotidynia に類似する画像所見を呈し,経時的に経過を追うことができた症例を経験した.このことは高安動脈炎の経過において非常に重要な所見と考える.

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© 2019 公益社団法人 日本超音波医学会
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