抄録
下肢静脈超音波検査は,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)と下肢静脈瘤の評価が主目的となる.日常業務の大半をこれらのスクリーニング検査が占めている.ある程度の技術を身に付けて手順を学べば多くのスクリーニング検査には対応できるようになるが,様々な疾患の病態に対する知識がなければ十分な検査結果を得ることができない.先天性静脈奇形であるKlippel-Trenaunay 症候群(KTS)は深部静脈形成不全やDVTを伴うこともあり,表在静脈の走行も一様ではない.よって,超音波検査の画一化された検査手順は存在しないが,多種な病態を示すことを知っておくことが重要である.特殊型下肢静脈瘤の原因である骨盤内静脈鬱滞症候群(pelvic congestion syndrome:PCS)においては通常型(伏在型,側枝型)静脈瘤の原因である伏在静脈大腿静脈接合部および合流枝への逆流を確認,大腿背部穿通枝不全の有無を確認することでPCSの疑いとすることが出来る.ナットクラッカー症候群がPCSの原因であることも考えられるためやせ型体型の患者であれば左腎静脈の確認もしておくとよい.静脈疾患の多くは圧排や逆流による圧力の変化により生じていることが多い.異常所見を見つけた時にはどこにその原因があるかを確認・推測していくが,その理解のためには解剖や生理,疾患の病態を理解しておく必要があると考える.