2021 年 48 巻 1 号 p. 17-24
目的:本研究では,特異値分解(singular value decomposition: SVD)を用いた血管内腔領域同定のための新しい手法を提案し,その提案手法を総頸動脈の生体計測結果に適用することで有用性を確認した.方法:血管内腔領域を同定するために自己相関法を用いて推定した速度マップにSVDフィルタを適用した.本研究では,フレームレートを1,302 Hz,パケットサイズを999フレームに設定した.SVDフィルタリングによって推定された血管内腔領域を従来手法であるパワードプラ法による推定結果と比較した.結果:提案手法と従来手法によって得られた血管壁と血管内腔領域の特徴量の差の平均値はそれぞれ34 dBと26 dBであった.提案手法は時相による影響をほとんど受けず,血管壁と血管内腔領域をより安定的に分離することが可能であった.提案手法では-28dBの閾値を設定することによって血管内腔領域を同定することが可能であった.結論:我々は血管内腔領域の同定のための新しい手法を提案した.この提案手法では,従来のパワードプラ法を用いた場合に抑制することができなかった血管壁の動きの影響も抑制することが可能であった.提案手法によって同定された血管内腔領域は,対応するBモード画像とよく一致した.