2021 年 48 巻 4 号 p. 193-199
目的:超音波エラストグラフィによる肝硬度は,肝線維化だけでなく肝の炎症,黄疸やうっ血などの影響を受けるとされる.肝の線維化および壊死・炎症が肝硬度に与える影響に関して検討した.対象と方法:7,825例の慢性肝疾患のうち測定基準に合致した809名を対象に,TEおよびVTQから得られた値を用い組織学的に診断された線維化および壊死炎症のグレードと比較検討した.結果と考察:TEおよびVTQの線維化診断能AUROCは,F2≤,F3≤,F4はそれぞれ,TEが0.809,0.860,0.947,VTQが0.793,0.836,0.941であった.肝線維化の進行とともに肝硬度は有意に上昇した.また肝の壊死・炎症の進行でも肝硬度は有意に上昇した.線維化グレードごとの検討でも肝硬変例を除いて炎症が高値なほど肝硬度は高値であった.結論:肝硬度は肝線維化の非侵襲的な診断法として有用であるが,肝の炎症にも影響を受け,値の解釈には注意が必要である.