超音波医学
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特集「Echocardiographic management of valvular heart disease」
大動脈弁狭窄症の診断と治療における心エコー検査の役割
北井 豪Rayji S. Tsutsui
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2021 年 48 巻 4 号 p. 165-175

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抄録

大動脈弁狭窄症(AS)は,有病率の増加,不良な予後,ならびに複雑な病態生理学のために大きな医療問題となっている.心エコーは,ASの包括的な形態学的および血行動態的評価で中心的な役割を果たす.ASの重症度診断は,最大大動脈弁通過血流速度,大動脈弁通過血流平均圧較差(mPG),および大動脈弁口面積(AVA)の3つの血行動態指標に基づいている.しかし,AVAが<1.0 cm2であるが,mPGが<40 mmHgの場合など,各指標間で重症度評価が一致しないことも多い.このような病態は低圧較差AS(LGAS)として知られている.特に,一回拍出量や駆出率が低い症候性LGAS患者は,重症度の診断がさらに難しく,予後も不良であるため注意が必要である.このLGASの重症度評価には,負荷心エコーが重要な役割を果たす.外科的大動脈弁置換術(SAVR)の禁忌となる併存疾患を有する高齢患者やハイリスク患者には,経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)が可能となり,ASの治療は大きく変化してきている.TAVRではコンピュータ断層撮影(CT)と共に,心エコーは大動脈弁と周辺の大動脈基部複合体の術前評価に非常に重要である.本総説では,ASの診断と管理に心エコーが果たしてきた役割の進展,大動脈複合体の評価の困難さ,負荷心エコーや3D心エコーといった専門的方法のニーズ拡大について概説する.

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